ugo株式会社
- IoT等を活用した企業・自治体等向け製品・サービス等の提供
- IoT等を活用した社会課題解決の取り組み
- IoT等を活用した実証実験等の取り組み
【関連する技術、仕組み、概念】
- IoT
- ビッグデータ
- AI
- DX
- 4G
- 5G
【IoT等の利活用分野】
- 製造(食品)
- 製造(科学)
- 製造(電機)
- 製造(医療)
- 防犯セキュリティ
- 建設・設備
- 運輸・交通
【IoT等の利活用の主な目的・効果】
- 生産性向上、業務改善
- サービス・業務等の品質向上・高付加価値化、顧客サービス向上
課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)
我が国はさまざまな分野で人手不足が大きな課題となっており、人が行っている業務の自動化や遠隔化が不可欠となっている。このため清掃、警備、点検、配送などさまざまな業務で、ロボットが急速に普及している。デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社の予想では、国内サービスロボット・ソリューション市場は、2022年から2027年の5年間で年率33.5%の伸びで急成長し1,000億円規模に達する。しかしながら、現在、商品化されているサービスロボットは高価なものが多い。また、ロボットとシステム設備・IoT機器を連携しようとすると、それにも多くの費用を要する。さらには、現場の当事者が設定を自由に変更できないものが多く、導入した後に業務改善のサイクルを回すことが難しい。誰でも簡単に迅速に使えるものとはなっていないので、現場で使いやすく、費用対効果に優れたソリューションを提供すれば世の中に受け入れられると考え、2018年にugo株式会社を設立した。
なお、当社の「社会インフラを支える業務DXロボットugo(ユーゴ―)」は、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が開催する「第21回MCPC award 2023」のサービス&ソリューション部門において最優秀賞を受賞している。
IoT等利活用の経緯
当社は、人とロボットの協働モデルと環境データの収集・分析によって、従来の労働集約型の日常業務を最適化し、少ない労働力で成り立つ運用システムを構築するというビジョンを掲げている。このようなビジョンの実現に不可欠なことは、実証しながら商品を改善することである。当社にとって幸運だったのは、伴走していただける良きビジネスパートナーに出会えたことである。警備ロボットの導入課題の一つは、エレベータでの移動が必要になることである。このために、エレベータの改修で対応することが多い。当時開発していたロボットをご覧になった設備管理会社の方に、エレベータのボタンを押せるロボットの開発を要請された。大丈夫ですと答えたところ、出資してもらい実証実験にも協力してもらった。警備ロボットの欠点を克服できたことが、市場展開に向けての大きな力となった。
事例の概要
サービス名等、関連URL、主な導入企業名
・業務DXロボット ugo
関連URL:https://ugo.plus/products/
・ロボット統合管理プラットフォーム ugo Platform
関連URL:https://ugo.plus/ugo-platform/
サービスやビジネスモデルの概要
業務DXロボットugoは、人が行っている業務を自動化・遠隔化することを狙っている。この過程で業務の可視化が可能となり、特定の作業者に紐づき属人化していた業務のデジタル化が可能となる。当社が提供するugoのラインナップとそれらの適用領域、価格は図1のとおりである。
一方、ロボット統合管理プラットフォームugo Platformは、パソコンやスマートフォンを使うように誰でも簡単にロボットを使えるようにすることを狙っている。このため、図2に示すとおりさまざまな機能を盛り込んでいる。ロボット・システム設備・IoT機器の連携を容易にする機能、ノーコードで誰でも簡単にロボットの設定を可能にする機能、さらに業務を見える化しデータに基づく継続的な改善を可能にする機能などである。実際にロボットを移動させながら実施してほしい作業を登録することで、誰でも簡単にロボットに依頼したい作業を設定できる。そして、あとはロボットが設定した作業を自動的に実施してくれる。
図1:業務DXロボットugoのラインアップとそれらの適用領域、価格
(出所:ugo提供資料)
図2:ロボット統合管理プラットフォームugo Platformの機能
(出所:ugo提供資料)
ビジネスやサービスの内容詳細
現在、当社の業務DXロボットが対応しているのは、警備、点検、介護の3分野である。このうち、介護は実証段階である。警備DXソリューションは、日中は立哨業務、夜間は巡回業務に活用するなど24時間フルに活用されるなどのユースケースがあり、この場合、導入効果としては2台で4人分の省人効果があるなどの検証がなされている。エレベータ改修が不要で、建物の複数の階をまたがった警備ができることが他社に対しての優位性となっている。
一方、点検DXソリューションは、設備の点検業務や遠隔監視などに用いられており、データセンター、プラント、工場などさまざまな環境で使われている。ポイントとなるのはロボットに置き換える業務の明確化である。図3に示すように、点検DXソリューションでは従来の巡回点検、点検結果のレポート作成、レポートの共有・通知などの業務を自動化・遠隔化することが可能である。この際に、各種センサーからデータを収集するためのリーダーをロボットに搭載する、ロボットが収集した画像データをAIシステムに送付し異常を自動検知するなどの連携が必要となるケースがある。また、高所の点検はドローンで、ドローンで点検できない部分はロボットで、という協調作業が必要となるケースもある。
図3:ugoが実現する点検DXの一つ自動巡回/点検の概要
(出所:ugo提供資料)
介護DXソリューションにおいては、案内・運搬業務や巡回業務の可能性などについて、検証を行っている段階である。
取り扱うデータの概要とその活用法
・ ロボットが撮影した画像・映像データ
・ その他、点群データ(LiDAR)、表面温度(サーモメータ)、温度・湿度、CO2濃度、揮発性有機化合物濃度、
PM2.5濃度(大気中に浮遊している直径2.5μm以下の微粒子の濃度)など、ロボットに搭載するセンサーが
収集するさまざまなデータを取り扱うことが可能
事例の特徴・工夫点
IoT等の利活用によって創造した価値
当社は、移動を伴う仕事(目的地までの往復に時間を要する)を遠隔からロボットを操作し実施すること、人でなくても実施可能な単純作業をロボットで代替すること、により人の手間を省き生産性を上げることを狙っている。現場では、業務の指示や記録も紙であるなどアナログベースであることが多い。これをロボットで実施できるようにする際に、「①現場Aでは3個メータがありそれらを順番に読み取る、②数値が異常と判断するのは、○✖の場合、異常と判断したら□△や◇▽に連絡する。」などと業務内容が可視化され、さらに読み取った数値などをデジタルデータとして蓄積できるようになる。このような手法は現場のノウハウをデジタル化し、次の世代に引き継げるようにするために有効な方法論の一つだと考えている。
ロボット活用の想定外の効果としては、働き方の変化によって職種のイメージが変わったことがあげられる。例えば、警備の仕事がロボットを操縦するパイロットのようなイメージでとらえられ、若い人の応募が増えたと聞いている。
事業化戦略
当社は、ターゲットとするマーケットを決める際に、ロボットが提供するサービスに対して潜在顧客が支払い可能な金額もあわせて予想した。ロボットの機能を高くするとできることは増えるが、価格が高くなり購入する顧客が減ってしまう。顧客が支払える価格を前提に、顧客が満足できるロボットの機能を考えた。また、限られた機能で対応するため、顧客に使い方を工夫することもお願いした。例えば、段差がある場所を移動可能とするため、じゅうたんを敷いてもらうなどの工夫である。ロボットができることを考え、それによって可能な業務効率化を考えた。結果として、人の仕事を奪うのではなく、人と協働するロボットの開発ができたと考えている。
また、ugoとプラットフォームの多くの機能は、顧客の声を聴きながら開発した。こういうデータがほしいという顧客の声に応え、多様なセンサーを活用できるようにしている。
重要成功要因
当社はスタートアップであり、スピード感がある改善・改良ができたことが成功要因の一つだと考えている。これが可能だったのは、自社でロボット組立工場を持っており、ロボットの設計・量産・アフターサポートまで行っているからである。三菱電機、キヤノン、ソニー、NEC、日立建機など国内大手メーカ出身のエンジニアが、社会実装ファーストの方針のもと活躍している。
また、当社のロボットは、①警備DXソリューション、②点検DXソリューション、③介護DXソリューションと対象業務を広げているが、その度ごとにパートナーシップを組んでいただけた企業と一緒になってロボットやソリューションを開発・改善している。開発当初は3か月に一度くらいの速いペースでロボットの改良を繰り返し、パートナーの声を取り込みながら製品化をすすめた。。このように伴走していただけるパートナーが見つかったことも大きな成功要因である。
技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの
業務DXロボット普及のための鍵は、誰でも簡単にロボットが扱えることと考えた。これを実現するために、ロボットを簡単に扱えるようにする技術開発に注力した。顧客が自分で使い方をハンドリングできるようなロボットの実現の鍵は、他のITサービスと同様にクラウド上で実現することだと考えプラットフォームを構築した。
今後の展開
現在抱えている課題、将来的に想定する課題、挑戦
ロボットをさらに多くの企業が活用できるようにするためには、作業をロボットに置き換えるために必要なマニュアル整備、活用コンテンツの充実、顧客トレーニングの提供など周辺サービスを整えていくことが必要となる。これを加速するために、いろいろな方々の協力を得て業務DXロボットのエコシステムを構築していきたい。
技術革新や環境整備への期待
現在の法制度では、目視による現場での点検が基本となっている。デジタル庁がこのようなアナログ規制の緩和をめざしているが、点検業務や警備業務について遠隔からの実施を認めるなどの法制度改革を期待している。
強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動
ロボットやプラットフォームの一層の活用を推進するため、周辺サービスを充実していきたい。
将来的に展開を検討したい分野、業種
24時間、365日、休みなく稼働している社会インフラを支えていくために、ロボットの活用に関連するさまざまな社会インフラ関係の方々とパートナーシップを構築していきたい。