アムニモ株式会社
- 事業・業務の見える化
- コスト削減
- 事業・業務プロセスの改善
- 故障や異常の予兆の検知、予防
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故障や異常への迅速な措置
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変動する需給バランスの最適化
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収集情報を活用した新規事業の発掘
【活用対象】
- 他企業とのアライアンス・コミュニティ内で活用
- 企業顧客
IoT導入のきっかけ、背景
アムニモ(amnimo)は、産業用IoT(Industrial Internet of Things)サービスを提供するために、横河電機株式会社の新規事業として100%出資により2018年5月に発足した。
デジタル化による事業変革があらゆる業種において求められる中、多くの現場には依然として人手を介したアナログ的な業務が残っている。そのため、IoTを活用した効率化や自動化に期待が集まっているが、多くの中小企業にとってIoTの導入は容易ではない。IoTは、センシング、通信ネットワーク、データ収集・分析基盤、アプリケーションなどの多くの構成要素から成り立ち、導入には専門知識を持つ部署や人員が必要だからである。
加えて、IoTを活用するためには、データ収集による可視化などによって自社の業務やプロセスの課題を抽出し、その上で最適化を行うための技術や手法を選択し実装する必要がある。こうしたハードルのために、多くの企業では、IoTを活用した事業変革やイノベーションへのチャレンジを始めたくても始められないのが現状である。
そこで当社は、専門知識を持たない企業が簡単にIoTを活用するためのプラットフォームを開発し、その上で動く「IoT基本サービス」としてamnimo sense(アムニモ センス)を提供している。amnimo senseは、IoT用の通信デバイス、セルラー回線、IoT基盤、API/SDKといったIoTシステムの構築に必要な環境のほか、請求/集金インフラ、保守/運用などのシステム運用に必要な環境をオールインワンで提供するプラットフォームサービスで、初期費用は無料(センサーを除き)、月額料金(ハードウェアと通信料金も込み)のみで提供している。
またユーザーが抱えている業務課題に対してamnimo senseを組み合わせてすぐに実現、利用できるサンプルアプリケーションは、当社が紹介する「レシピ」を活用することで容易に実現できる。「レシピ」とは、多様な業務課題に応じて当社が用意した手順書であり、センサーデバイスの選定から接続、設置、システムのセッティングまでが明快に記載されており、ユーザーが導入しやすいソリューションのメニューを実現している。
レシピを使用した業務の見える化によって自社の課題が明確になり、自社のプロセスに最適化した、もしくは特定の用途に特化した解決策が必要となった際は、当社または当社パートナーを介したカスタマイズの対応もできるようにしている。
IoT事例の概要
サービス名等、関連URL、主な導入企業名
サービスやビジネスモデルの概要
amnimo senseは、IoTの導入を検討するための部署や人員を持たない中堅・中小企業や大手企業の一部署などが、業務課題に対応したレシピを使用することによって、IoTを簡単に導入できるサービスである。例えば、従来は部品在庫量の把握を人が目視で確認しに見に行っていたといった非効率な作業を、重量センサーなどによって部品在庫量を自動監視、通知し欠品を防止するレシピを提供している。
amnimo senseでは図-1に示すように、センサー類を接続するためのエンドポイントデバイス、クラウドとデータ通信を行うためのゲートウェイ、及びクラウドサービスを当社が提供する。センサー類はお客様でご用意いただく形としており、表-1に示すように、当社が接続検証を行った推奨品のリストを提供している。
お客様はセンサーを接続し、機器とアプリケーションの設定を行うだけで、時間とコストを要するソフトウェアの開発を行うことなく、導入後直ぐに遠隔監視などが可能となる。
図-1 amnimo senseの構成
表-1 お客様にご用意いただく推奨品リストの例
amnimo senseの料金は月額制で、測定点やエンドポイントデバイスの数によって変動する。月額料金には、エンドポイントデバイスとゲートウェイも含むため、ハードウェアの初期投資が(センサー類を除いて)不要である。さらに、1測定点からの小規模構成でスモールスタートし、効果を確認した後に規模を拡大することも可能である。
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1測定点(エンドポイントデバイス1個)
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5測定点(エンドポイントデバイス5個)
ビジネスやサービスの内容詳細
提供サービスの内容を以下に示す。お客様の業務課題によって複数のサービス形態を提供している。
(1) IoT基本サービスamnimo sense
本サービスは、冒頭に示したとおり、業務課題に応じたレシピによって簡単に導入できる基本サービスである。レシピは本稿執筆時点で20種類以上を提供しており、製造業、サービス業、公共事業といった業種別のほか、利用シーン別に分類している。またユーザーからの要件に合ったセンサーを活用したシステム提案も個別に実施している。レシピは当社Webサイトでご覧いただくことが可能である。
amnimo senseでは、設置から稼働に至る導入過程全体での使い勝手のよさにこだわっている。以下に、導入過程の概要を示す。
STEP-1 会員登録と加入
- 会員登録(無料)を行い、ECサイトでサービスに加入契約をする。
STEP-2 設置
スマートフォンアプリ(iOS / Android)を使用して、ゲートウェイとエンドポイントデバイスに貼り付けているQRコードをスキャンすることで簡単に行うことができる。(写真-1, 2を参照)
- センサーとゲートウェイ及びエンドポイントデバイスを配線する。
- Webブラウザの画面上にグラフなどの部品(ウィジェット)を配置し、グラフの表示形式やアラーム通知閾値などをGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)を使用して設定する。
- デバイスからのデータが表示されることを確認する。
STEP-3 開始
- データの監視を行う。
このように、amnimo senseによって、従来は人手で行っていた業務の効率化が、思ったより簡単に実現できることを実感していただけると考えている。
写真-1 ゲートウェイ(左)、エンドポイントデバイス(右)の外観
写真-2 ゲートウェイのアクティベーション(スマホアプリ(左)をタップして開始)
(2) 共創パートナーとの連携による付加価値提供
当社は、amnimo senseをベースに、パートナーと連携してさらなる顧客価値を提供するためのアムニモ・パートナープログラムを2019年6月から開始した。パートナーには、「セールスパートナー」「事業開発パートナー」「共創パートナー」「独立パートナー」の4タイプがある。
amnimo senseを使用することよって、IoTを活用した業務の効率化や費用削減が実証されると、次のステップとして業務プロセスの最適化が必要になる場合がある。
そこで、共創パートナーと連携して上記のニーズに答えられるようにしている。
(3) 事業開発パートナーとの連携によるIoT応用サービスの提供
アムニモ・パートナープログラムでは、「事業開発パートナー」との協業を通じて顧客価値発見や市場開拓などの事業開発を行う。例えば、特定の業種や機器の課題に関する知見と販路を持つパートナーと協業することによって、特定用途向けのIoT応用サービスを提供することが考えらえる。
その一例が、流体制御機器メーカーの株式会社イワキ(以下、イワキ)を事業開発パートナーとする、渦巻きポンプと周辺設備の遠隔監視サービス「pump guard(ポンプガード)」である。イワキは薬液などを移送するケミカルポンプの世界的メーカーで、ポンプに加えてポンプの異常運転を監視するための「ポンププロテクタDRN」を商品として保有していた。
このポンププロテクタDRNを使用した渦巻きポンプの遠隔監視を当社のプラットフォーム上で実現した(図-2を参照)。pump guardを使用することによってポンプとポンプをつなぐ設備機器や生産物の動作、状態を常時監視し、異常発生時には緊急停止を行うことによって、重大な故障を未然に防ぐとともに、遠隔地の管理者に通報することが可能となった。加えて、ポンプと周辺設備の稼働データを蓄積することによって故障時のデータ解析などを効率化することができる。pump guardはイワキ製以外の渦巻きポンプも監視が可能である。
図-2 pump guardの概要
概要図
当社サービスの体系を表-2に、amnimo sense(IoT基本サービス)の構成を図-3に示す。
カテゴリー | 製品/サービス | 概要 |
IoT基本サービス (プラットフォーム) |
amnimo sense | IoT用の通信デバイス、セルラー回路、IoT基盤、API/SDKといったIoTシステムの構築に必要な環境のほか、請求/集金インフラ、保守/運用などのシステム運用に必要な環境をオールインワンパッケージで提供するプラットフォームサービス。初期費用は無料(センサーを除き)、月額料金(ハードウェアと通信料金も込み)のみで提供。 |
IoT応用サービス (アプリケーション) |
pump guard | 産業用うずまきポンプの遠隔監視、予知保全サービス。株式会社イワキと協業(接続ハードウェアの提供と販促) |
water level | 簡易無線水位計測サービス。無線水位計、通信、クラウドのオールインワンパッケージを、初期費用不要で月額料金のみで提供。 |
表-2 当社サービスの体系
図-3 amnimo senseの構成
取り扱うデータの概要とその活用法
- エンドポイントデバイスなどに接続する各種センサーの情報
- 画像、映像データへの対応を検討中
事業化への道のり
事業化に当たり苦労した点、解決したハードル、開発・提供までにかかった期間
- 本サービスの想定顧客が、どのようにすれば簡単にサービスを使えるか、どのようなところでつまずくのかを様々な角度から分析し、分かりやすいユーザー・インタフェースやユーザー体験の作りこみを行った。
- お客様の初期コストを下げるためにビジネスモデルを工夫し、ハードウェアも月額課金とする料金体系を実現した。
技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの
- amnimoのプラットフォームを構成する基本的な技術は自社開発にこだわらず、他社の既存技術を組み合わせて実現した。そのため、クラウド基盤はMicrosoft Azureを使用し、他社デバイスやオープンソース・ソフトウェアも活用している。
- 一方で、簡単に使えることを第一優先に開発を行い、QRコード読み取りだけで簡易にアクティベーションができるスマートフォンアプリなどは自社で開発している。
今後の展開
現在抱えている課題、将来的に想定する課題
- ユーザーはIoTを実現したいわけではなく、業務改善・改革、経営課題の解決を希求しており、その実現のための手段としてIoTをどうやって手軽に始められ、実業務に取り込めるかを全面にサポートしていく体制の強化が必要である。
- ビジネスがよりスケールするために商品数を増やし販路を拡大していくことが必要である。
強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動
- pump guardで協業したイワキのように、特定の用途に特化したノウハウや販路などで強みを持つ企業との連携を強化したい。
- 販売サービスの販売、導入に強みを持つ企業とのパートナリングを強化したい
- サービスひとつひとつでの訴求ではなく、クロスセルでき、ユーザーの課題を幅広く解決できるメニューを提供していきたい