掲載日 2019年04月17日
株式会社バニーホップ

株式会社バニーホップ

【提供目的】
  • 生産性向上、業務改善
  • 顧客サービス向上
  • 事業継続性

【活用対象】

  • 企業顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 近年ICTを活用した業務の効率化が多くの分野で進んでいるが、「ちょっとしたこと」で現場まで出向いて装置の操作などを行うシーンがまだ数多く存在する。当社は、IoTプラットフォーム、製品およびIoTサービスの企画、開発、運用を手がけるベンチャー企業であるが、お客様と様々なプロジェクトを進める中で、冒頭に示す現場の負担を実感し、IoTを用いた遠隔制御によって「毎回現場に出向く負担」を軽減できると考えた。

 IoTのユースケースとして、センサーデータの収集とデータ解析による現場の見える化や改善点の発見などがある。当社は、IoTのもう一つの使い方である遠隔制御に着目した。従来、現場で稼働している多くの既存設備は通信機能を備えておらず遠隔制御ができない。通信機能を後付けする場合は、第三者による許可されていない操作を防止するなどのセキュリティ対策が必須である。そのため多くの企業では、既存設備の遠隔制御の実現は困難であった。

 そこで当社は、デバイスとデバイスを操作するクラウド上のWebアプリケーション間をセキュアに接続するためのプラットフォームであるJET IoTを自社開発し、当社が提供するIoT Connector(通信機能を実現)と組み合わせることによってセキュアな遠隔制御を実現した。加えて、お客様の業務フローを実行するアプリケーションを開発・提供することによって、最小限の投資で省人化を可能とするソリューションを提供している。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

サービス名: IoTプラットフォームJET IoT、およびJET IoTを用いたソリューション

 

サービスやビジネスモデルの概要

(1)  JET IoTによるデバイスとのセキュアな通信

JET IoTの概要を図-1に示す。JET IoTは、デバイス(IoT機器)と、制御や業務アプリケーションを実行する外部システムとの間に位置し、デバイスと外部システム間の通信を中継する。通信機能を持たない既存デバイスには、当社が設計した通信モジュールであるIoT Connector(図-2)を後付けすることによって通信機能を実現している。加えて、IoT ConnectorとJET IoT間の通信にHTTPS(TLS)を用い、暗号化および通信相手としてのデバイスの認証を行うことによってセキュリティを確保している。

図-1 JET IoTの概要

 

(2) 既存設備の有効活用

自動ドアなどの建設系設備の多くは、接点信号などの比較的簡単なインタフェースによって、オン・オフや開閉の制御が可能である。そこで、IoT Connector(図-2)に接点信号の制御端子を設けることによって、自動ドアの開け閉めなど、既存設備の遠隔操作を実現した。

図-2 IoT Connectorと制御端子

 

(3) 省人化を行うための業務フォローの設計と提案

IoTによる既存業務省人化の効果を高めるためには、必要に応じて業務フローの見直しを行い、運用が容易なシステムにする必要がある。そこで当社は、お客様の既存業務を分析し、最適なシステム化が可能となる業務フローの提案も行なっている。

(4)  サービスメニューと料金体系

  • JET IoT:デバイス単位の月額料金
  • 制御や業務管理を行うクラウドサービス:Webアプリの月額利用料

 

ビジネスやサービスの内容詳細

 JET IoTを用いた当社提供ソリューションの事例を以下に示す。

 ◆事例1  スマートフォンを使用した自動ドアやシャッターの開閉制御

  • 集合住宅などの既存の自動ドアなどにIoT Connectorを付加し、スマートフォンからクラウド上のWebアプリ経由で自動ドアの開閉を行う(図-3を参照)。
  • 登録ユーザーは、ゲスト向けの鍵シェア登録や利用通知、万が一のスマートフォン紛失時のアカウント削除が可能。
  • いつ誰が使用したかが操作履歴として記録されるため、セキュリティを高めることが可能。

図-3 スマートフォンを使用した自動ドアなどの開閉制御

 

 ◆事例2  ゴルフ場のキャッシュレス化と設備制御の連携

  • 首都圏(青梅市)でゴルフコースと併設された練習場を経営するお客様に対して、新たな利用者(若年層)を呼び込むための低価格化に必要であったフロント業務の無人化を実現(図-4を参照)。
  • 利用者は従来の有人チェックインカウンターに代わり、無人のチェックイン機とスマートフォンを使用してチェックインを行い、同時にクレジットカードを使用したオンライン決済を実施する。従来はフロントにて、現金支払いを受けるための現金管理コストが発生したが、これをなくすこと(キャッシュレス化)ができた。
  • チェックイン機の操作が複雑になると、利用者からの問い合わせ対応スタッフを配置する必要が生じてしまい、省人化効果が十分得られない。そのためこのケースでは、チェックイン機の操作を画面表示だけで迷わずに行なえるよう、設備利用メニューの簡略化をお客様と共同して行なった。このようにして、サービスやビジネスモデルの概要-(3)に示した業務フローの最適化を行なっている。
  • チェックイン時に発行されるQRコードをコースの入場ゲートにかざすと、業務アプリケーションからゲート開閉を遠隔制御する。ゲートは従来から使用していた機器に当社基板を後付けすることによってIoT化を行なった。
  • ゴルフ場に併設された練習場でも、ボール貸出機にQRコード読み取り機能を付加し、ボール排出を遠隔制御することによってキャッシュレス化を実現した。従来は施設内でICカードにチャージを行なう必要があり、ここでも現金の管理が必要であったところをキャッシュレス化によって省人化した。

図-4 ゴルフ場のキャッシュレス化と機器の制御

 

(3)  スプリンクラー、イルミネーションの遠隔制御

  • 電磁バルブを使用したスプリンクラーの散水制御を遠隔から実施する。これによって、猛暑日に急遽散水が必用になった際も現場に出向く必要がなくなる(図-5を参照)。
  • イルミネーションの点灯消灯管理では、従来はタイマーの調整のために数日ごとに人が現場に通う必要があったところを、当社の遠隔制御を用いて現場での調整を不要とした。加えて、従来は即応が難しかった、漏電を検知した際のメール通知も実現している。

図-5 スプリンクラーの遠隔制御

 

概要図

  • 図-6に示す通り、JET IoTは、業務フローを実行しデバイスを制御するアプリケーション(Web Application)とデバイス間の通信を、HTTPS(TLS)を用いてセキュアに中継する。

図-6 JET IoTとWeb Application

 

  • 加えて図-7に示す通り、JET IoTは外部システム接続用に、WebAPI、Webhook(*1)、Socket(*2)通信の3種類の接続インタフェースを提供している。これらのインタフェースを用いて、外部システムとIoT機器間の情報送受信を簡単に行うことができる。

図-7 JET IoTを使用した外部システムとの連携

 

(*1) Webhook: アプリケーションで何らかのイベントが発生した際に、HTTP POSTリクエストを使用して外部サーバーに通知する仕組み。

(*2)Socket: TCP上でIPアドレスとポート番号のペアを使用して通信を行う仕組み。

 

取り扱うデータの概要とその活用法

事例2(ゴルフ場のキャッシュレス化と省人化)では、以下のデータを使用している。

  • Webアプリケーションが管理する予約情報
  • 来場者の情報(代表で予約した方に加えて同伴プレーヤーの情報を取得し、来場者個々にQRコードを発行)
  • QRコードによるゲートの開閉やボールの貸し出し(Webアプリケーションからの制御情報の送信)

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

  • IoTによる省人化などの効果を理解していただくことに苦労した。
  • ソフトウェアのみで構成できるクラウドシステムと異なり、デバイス(ハードウェア)を含む商流の構築が必要であった。
  • ハードウェアは売り切りビジネスが主体であるため、JET IoTを組み合わせた月額料金体系を理解していただく必要があった。
  • 新規顧客開拓など営業面に苦労している。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

  • JET IoTは一から自社開発した。メッセージ処理や暗号化もコア部分は自社で開発している。開発効率化のために各種のオープンソースソフトウェアを活用している。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

  • プラットフォームとしてのJET IoTやそれを活用したソリューション開発など、技術的な部分は構築できてきた。この経験、蓄積を生かしてさらにビジネスを拡大する必要がある。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

  • JET IoTをプラットフォームとし、省人化の課題を解決するソリューションの提供までを行なっているため、多様なお客様が抱えている課題を見つけて対応ソリューションの開発につなげることが必要となる。そのために、お客様の課題を効率的に集めるための人的ネットワーク構築が必要と考えている。例えば、地方の現場をよく分かっている設備商社と連携することが考えられる。
  • 現場に通い、お客様の課題・ニーズを的確にくみ取り、企画提案ができる人材の強化を図りたい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

  • サービスやビジネスモデルの概要-(2)に示す事例(ゴルフ場のキャッシュレス化と省人化)をゴルフ練習場に展開することが考えられる。そのために、練習場のシステム開発ベンダー、ボール貸出機のベンダーとの連携が考えられる。

 

本記事へのお問い合わせ先

株式会社バニーホップ IoTソリューション事業部

e-mail : info@bunnyhop.jp

URL : http://www.bunnyhop.jp