掲載日 2018年04月02日
ダイキン工業株式会社

ダイキン工業株式会社

【提供目的】
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 顧客へのサービス対応・サービス品質向上
  • 最適経路・プロセスの選択
  • 経営判断の迅速化・精密化

【活用対象】

  • 企業顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 当社では、1993年より空調機器の運転データ(温度・圧力・運転時間等)を収集している。お客様のところに設置している監視装置より通信回線を介し、24時間365日当社サーバーに多くのデータを集めている。その目的は、空調設備を止めないこと、空調機器のライフサイクルコストを低減すること、さらに安心な空気環境を提供することである。当社で開発した故障予知ロジックを用いて収集データを分析し、空調機器の異常や故障を事前に検出することも可能である。

 サービス提供のそもそものきっかけは、上からの強力なリーダーシップ。当社では、空調設備の提供だけでなくお客様により快適な空調環境を実現するサービス提供や省エネ提案などを重視しており、これが他社に先んじてのサービス提供につながった。この考え方は現在も引き継がれており、お客様や販売店に空調機器の運転状況を「見える化」し提示するなど、データの更なる活用に取り組んでいるところ。

 また、当社の技術力を多方面に展開するため、テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を設置している。ベンチャー企業や大学、異業種など社内外の多様な人々との協創イノベーションに挑戦しているところである。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

 サービス名「省エネ支援サービス エアネットサービスシステム」

サービスやビジネスモデルの概要

  • 当社製空調機器を使用されているお客様のところに監視装置を設置し「エアネットサービスシステム」により当社サーバーに送信し、24時間365日の遠隔監視を行っている。これによって、空調機器の劣化や異常発生を早期に検知。また、長年収集したデータに基づき故障をかなり前から予知可能。
  • 空調の状況を「見える化」し、専用Webページより各種レポートとして提供。「見える化」したのは、電力消費量、系統別設定温度と空調機器の運転状況、部品稼働時間など。ポイントは、お客様の空調機使用のムダ(設定温度・運転時間)を可視化したこと。
  • 気象変化を踏まえた自動省エネ制御の他、季節ごとの設定温度や運転時間を最適化。また、ダイキンエアネットコントロールセンタより遠隔制御することも可能としている。
  • オフィスビル、病院、介護施設、データセンターなど空調環境が重要なお客様にサービスを展開。最近、力を入れ始めたのは「運用改善提案」。運転データや各種レポートを見ても省エネ方法がわからないお客様が多数おられるので、省エネ運用の代行を開始している。お客様との話合いで空調機器の運転スケジュールや温度を設定し、現場の声を聞いて微調整する取組み。空調機器の運用改善などで16~35%程度空調電気使用量が削減されるなどの取り組み事例が生まれている

内容詳細

(1)当社が開発したオンライン診断システムで、異常停止や突発修理などのトラブルを予知し、事前保守による故障を未然に防止する。(故障予知)

【故障予知項目例】
熱交換器の汚れ、エアフィルターの汚れ、送風機の異常、圧縮機の異常、熱交換器の汚れ
 

(2)日別・時間別や系統別(部屋別)で空調消費電力や設定温度や運転時間などを提供

  • 温度、消費電力に関するレポート:外気温、室内温度、設定温度、運転時間、電力消費量など
  • お客様の使用に関するレポート:消し忘れ運転時間、冷やし過ぎ運転時間、暖め過ぎ運転時間など
  • 設備稼働に関するレポート:室内機ファンモーター、室外機インバータ圧縮機など

概要図

 長年に亘り収集したデータに基づいた当社独自の故障予知手法により、空調機器故障の70%以上の予知を可能としている。

 

取り扱うデータの概要とその活用法

 温度の他、空調設備内の各種部品について多くのセンサーよりデータを収集
  • 温度:室温、外気温、設定温度、吸込温度など
  • 機器運転状況:圧縮機、室外機ファン、弁、運転時間など

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

  • 空調設備故障の影響は大きいものの故障頻度が少ないことから、お客様に「エアネットサービス」のメリットをご理解頂くまでに時間を要した。また、当社の空調製品のお客様の中で多数を占める中小事業者においては、専任の設備管理担当者がいない場合が多く、そもそも省エネが十分に実施できていないことが多かった。これらのお客様に対しては、「運用改善提案」のため訪問しレクチャーする、あるいはお客様の会議に参加して説明するなどで対応。
  • 当社のサポート担当では手の届きにくいセキュリティや通信機能については、進化が激しいこともありフォローに苦労した。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 基幹技術である「エアネットサービスシステム」は、1993年より自社で開発・改良を進めた。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 省エネのために設定温度制限などをプログラミングしているが、気象状況や利用状況により快適環境を損ねる事もあり、現場の状況に応じてその都度改良を行っている。しかし、世界各国のお客様を相手にこれを実施するのは難しいので、今後、センシングの対象を人にまで拡げ、この設定や運用を自動化したい。経営者の考え方によって、夏でも長袖からクールビズまで服装が違うし、また、国ごとに事情も違うで難しい点は多いが、ぜひチャレンジしたい。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

  • 今までコストを圧迫してきた通信費は下がってきたが、今後コスト圧迫要因になると思われるのがセキュリティ機能。この改善を進め、サービス提供価格の低減に取り組む。
  • 快適環境制御を容易化するWEB見える化ツールの提供や省エネ設定スケジュール機能等の更なる拡充に取り組む。
  • 販売店の営業力、サポート力強化のため、本システムのプラットフォーム化を進め、販売店でデータ活用を可能とする。

将来的に展開を検討したい分野、業種

  • 空調機器のビックデータを活用した、快適環境制御や自動化の推進。例えば、当社ではテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)において、知的生産性を高める空気・空間の実現に向け、日本電気株式会社様と共同で実際のオフィスや実験室を活用してデータを収集しIoT/AI活用による価値創出の実証を行っている。
  • 海外への本格的サービス展開

 

本記事へのお問い合わせ先

ダイキン工業株式会社 サービス本部 西日本サービス部  木下敬雄
e-mail : takao.kinoshita@daikin.co.jp