掲載日 2020年02月19日

羽田市場

【提供目的】
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 顧客へのサービス対応・サービス品質向上
  • 最適経路・プロセスの選択

  • 変動する需給バランスの最適化

【活用対象】

  • 企業顧客
  • 一般顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 

 当社は、水産物の生産者と消費者を直接結びつける流通事業および水産プラットフォーム事業を展開するベンチャー企業である。

 流通において、卸売市場は物品の集荷・仕分け・価格の形成・決済の機能を持つ。水産品の流通では、図-1の上段に示すように「産地卸売市場」と「消費者卸売市場」(代表例が豊洲の東京都中央卸売市場)が存在することなどから流通経路が複雑で、商品が消費者に届くまでに時間を要する。加えて、水産物は鮮度を保つために輸送中の冷蔵・冷凍が必要となるため、農産物に比べて価格に占める輸送費が高くなり、漁師への配分が少なくなる傾向がある。

 こうした中で、多くの地方で重要な産業となっている水産業の担い手である漁師の所得水準を向上することは、地方創生の課題を解決するためにも重要である。そこで、市場に安全かつ質が高い鮮魚を安定的に届ける新たな仕組みを作ることによって、漁師と消費者双方にメリットをもたらすことができると考えた。

 そのために、当社が地方で鮮魚を直接仕入れ、羽田空港をハブとした空輸によって、朝一番に獲れた魚を同日中に消費者に届けるという、流通プラットフォーム「羽田市場」を立ち上げ多くのお客様にご利用いただいている。

図-1 従来の市場流通と羽田市場の流通形態

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

サービス名:羽田市場

URL:https://hanedaichiba.com/

導入事例の概要

 図-1下段に示す通り、羽田市場は従来の卸売市場を介さず、生産者と消費者を直接結びつける新たな市場機能を提供している。羽田市場が、集荷・仕分け・価格の形成・輸送・決済を一括して行うことによって流通コストを低減し、生産者および消費者に還元すると同時に地方創生の課題を解決する三方よしのビジネスを実現した。

 加えて、羽田空港内に設置した当社鮮魚センターで仕分けや加工を行うことによって、朝水揚げされた鮮魚を当日中にお客様に届けるという圧倒的な鮮度と従来にはなかったトレーサビリティを実現した。

   本サービスは、デパート、スーパー、すし、海鮮居酒屋などの法人の客様と一般のお客様を対象としており、それぞれに商品の選択・注文・決済のためのWebサイトを設けている。また、米国など海外にも輸出している。

導入事例の内容詳細

 産地で水揚げされた鮮魚を、羽田市場を介して消費者にお届けするまでの流れを以下に示す。

(1)  産地での仕入れ

 全国の漁業協同組合などから鮮魚を直接仕入れている。その際に、産地、漁師の氏名、水揚げ日時、種類、漁法(*1)などを当社のシステムに入力し、トレーサビリティを実現している。

(*1):魚の漁獲方法。釣り・はえ縄・定置網などを基本としている。

(2)  輸送・集荷・加工

 朝獲れ産地の魚は、鮮度を保つための船上での血抜き処理などを行った後に空輸され、その日の正午までに羽田鮮魚センター(写真-1を参照)に集荷される。羽田鮮魚センターは、HACCP認証や米国FDA施設登録された高い衛生基準を満たした施設で、鮮魚仕分け、加工、真空パックなどを行う。

写真-1 羽田鮮魚センター

(3)  注文と配送

 お客様がWebサイトなどから注文を行うと、入荷当日中に配送を行う(*2)。当社のお客様がデパート、スーパーなどの小売店の場合は、店頭で販売が行われる。その際に、超速鮮魚(当社登録商標)として産地や漁師のお名前を明記することによって、消費者の安心感の向上、産地の知名度向上、漁師のモチベーション向上に寄与している。(写真-2を参照)

*2: エリアや注文時間によっては翌日以降となる

写真-2 鮮魚売り場での「羽田市場」を活用した展開

 

概要図

 羽田市場のサービスの概要を図 -2に示す。

図-2 羽田市場のサービスの概要

 

取り扱うデータの概要とその活用法

 トレーサビリティを実現するために、ケース単位で、産地、漁師の氏名、水揚げ日時、種類、漁法などを管理している。

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 鮮魚は季節や日によって漁獲高が変動する。加えて、変動を事前に予測することが難しい。そのため、安定した供給を行うためには、多くの産地から集荷し一定の流通量をコンスタントに確保する必要がある。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 トレーサビリティや受発注を行うためのシステムは、Webやデータベースの技術を活用し、社内で開発している。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 これまでは、プラットフォームを立ち上げて拡大するために、鮮魚センターやEC(発注決済)システム開発への投資を優先的に行ってきた。今後は、ECシステムをお客様がより使いやすい形に発展させることに加えて、産地でのデータ入力の効率化と鮮魚運搬用の発泡スチロールケースのトレーサビリティ確保の自動化に取り組みたい。

 加えて、AI・画像認識技術を用いた仕分けの自動化、魚のおいしさを測る指標の一つである油ののりを非接触型センサーで測定するなど、IoT/ICTを活用した効率化や付加価値の向上を行いたい。現状の水産業界は、品質の判断が目利きの経験による部分が大きいため、評価基準の整備も必要と考えている。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 漁業は不漁の際は消費者価格が高騰するが逆に獲れすぎた場合は暴落するという需給のアンマッチによる価格変動が大きい。こうした価格変動は、生産者・消費者双方に不利益となるため、当社のような産地と消費者が直結した市場によって需給の調整能力を拡大したいと考えている。そのために、これまでに蓄積した、産地ごとに、いつ・何が・どれだけ獲れたかというビックデータと気象や海洋データを組み合わせることによって、漁獲高を予測するようなシステムを実現したい。

将来的に展開を(他企業との連携を含め)検討したい分野、業種

 販路を拡大するために、冷蔵施設を備えたコンシェルジュ常勤マンションへの一括配送を一部の地域で始めている。このような新たな販路の開拓を進めたい。

 

本記事へのお問い合わせ先

羽田市場株式会社

e-mail : haneda_kanri@hanedaichiba.com

URL :  https://hanedaichiba.com