掲載日 2019年02月26日
株式会社アクアビットスパイラルズ

株式会社アクアビットスパイラルズ

【提供目的】
  • 生産性向上、業務改善
  • 顧客サービス向上
  • 事業継続性

【活用対象】

  • 自社で活用

  • パートナー企業含めたグループ内で活用

  • 他企業とのアライアンス・コミュニティ内で活用

  • 企業顧客

  • 一般顧客

  • 社会全般

IoT提供のきっかけ、背景

 当社は「かざしてつながる文化を創る」をミッションに掲げるベンチャー企業である。近距離無線通信(NFC)技術を活用して独自に開発したハイパーリンク・オブ・シングズ(Hyperlink of Things® : HoT=モノのハイパーリンク)を普及させることで、実体のあるモノとサイバー空間にある情報やサービスが直接つながる社会の実現を目指している。

 30年近く前に発明されたWWW(World-Wide-Web)によってサイバー空間上のコンテンツを自由に結び付けることが可能となり、その後登場したWebの検索サービスやスマートフォンの登場とあいまって今やどこでも情報を取り出せるようになった。

 一方で例えば以下のように、適切なWeb情報にアクセスできないシーンも依然としてたくさんある。

  • 旅先で、目を引くオブジェを見つけ詳細を知りたいと思ったが、名前もわからず説明ボードなどもなかったので調べようがなかった。(もしくは日本語のため、外国人観光客には読めなかった)
  • 店頭で素敵な商品を見つけたが、その日は荷物も多く後の予定も詰まっていたためその場では購入できなかった。商品名の掲載がなく、後から詳細を調べることもできなかった。

 たとえWebに情報があるとしても、興味を引くモノに遭遇したその瞬間に検索すべきキーワードが得られない場合、我々は多くの場合その情報に触れる機会を失ってしまう。これが言語コミュニケーションの限界である。

 そこで当社はこの問題を「非言語コミュニケーション」で解決すべく、NFCタグの技術を活用して「モノ」にWeb空間への入り口となるハイパーリンクを埋め込み、スマートフォンをかざすだけで検索しなくても簡単に目的の情報にアクセスできる「スマートプレート」サービスを開発した。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

サービス名:スマートプレート(Hyperlink of Things)

URL: https://spirals.co.jp/ja/(サービスの紹介)

    https://www.youtube.com/watch?v=3zuN7HyJ1Wk(イメージビデオ)

サービスやビジネスモデルの概要

1.サービスの動作概要(詳細はイメージビデオを参照)

  • 興味があるモノ(スマートプレート)にスマートフォンをかざす
  • スマートフォンに様々な情報が瞬時に現れる

2.サービスの特徴

(1) NFCの利点を生かし、どこでも・簡単に利用が可能

  • スマートプレートはパッシブタグのためバッテリーが不要。そのため、設置場所を選ばず、メンテナンスが不要。
  • スマートフォンをかざすだけでブラウザーが起動し情報を表示する。そのため、アプリのインストールが不要、かつOS種別に依存しない。 (*1)
  • 検索キーワードの入力が不要。ググらせない世界を実現。

(*1): NFC機能を備えたAndroid端末、iPhoneに対応。AndroidやiPhone XS/XRではアプリのインストールも不要。iPhone X/8/7はNFCリーダーアプリが必要。

 

(2) 当社クラウドサービスとの連携による柔軟性の実現

 本サービスでは、NFCタグを内蔵したスマートプレートに当社が発行するID(*2)を埋め込み、そのIDと情報やサービスとの紐付けを当社のクラウドサービス上で管理することで、モノとコンテンツを動的に結びつける。この仕組みによって、以下に示すような柔軟なサービスを実現した。

  • アクセスした端末の言語設定に応じた多言語配信機能。例えばレストランで、英語端末ユーザーには英語で、中国語端末ユーザーには中国語でメニューを表示したり、訪日外国人向けにはより日本的なメニューを提示する、といったサービスが可能となる。
  • アクセスした日時に応じて表示内容を変える。例えば午前中にはランチタイムクーポン、夕方には晩酌クーポンを配信したり、食料品売り場では蒸し暑い日にはさっぱりしたサラダレシピを配信する、など。
  • はじめてアクセスしたビジターとリピーターとでクーポン提示内容を変える。
  • 商品や観光地紹介といった既存コンテンツをお持ちであれば、それらへの入り口としてスマートプレート をセットするだけですぐにでも運用開始できる。
  • ブラウザベースのWebコンテンツを開くだけでなく、例えば目的地をセットして地図アプリを起動したり、住所を指定してタクシー配車アプリを起動するなど、様々なアプリをコントロールすることも可能。

(*2): URL形式のモノのID

 

3.利用料金

 本サービスの利用料金は、スマートプレートに埋め込んだID数に応じた月額利用料、およびBIダッシュボード(管理ツール)の利用料からなる。

 

ビジネスやサービスの内容詳細

 スマートプレートは、既に様々な領域に導入され、新しいユーザー体験を創出している。代表的な導入事例を以下に示す。

◆事例1  観光案内所や旅館からインバウンド旅⾏者向け情報を多⾔語で配信

 言葉が十分に通じない状況でも、興味をもったプレートにスマートフォンをかざすだけで必要な情報を得ることが可能。

インバウンド旅⾏者向け情報配信

 

◆事例2  5坪の”業界最小店舗”で店頭在庫を最小限に抑え、直販ECに送客(東京シャツ)

 来店客は店舗の現物を見て気に入った商品をECカートに入れ、手ぶらで持ち帰りが可能。店舗は、在庫量を最小限にすることによって、狭いスペースでも多くの商品を陳列しかつ在庫管理コストを削減することが可能。

リアル店舗とECの連携

 

◆事例3  冷蔵庫マグネットから毎日クーポンチャレンジ&今すぐ注文(ピザハット)

 季節メニューの表示や、アクセス頻度に応じたクーポン提示など、シーンに応じたコンテンツを表示することによって購入意欲を喚起する。定期的な購入が分かっている消費材(飲み物、洗剤など)以外への適用が可能。

冷蔵庫からクーポンチャレンジ&注文

 

◆事例4  災害発生時に緊急情報を多言語で配信(ホテルメトロポリタン池袋)

  ホテルの客室にスマートプレートを設置。平時は館内情報を配信しているが、Lアラート(自治体の災害情報システム)と連動しており、災害発生時には避難情報などを表示する。

写真-7 災害時の緊急情報発信

 

 上記に加え、スタンプラリー、スーパー食材売り場でのレシピ配信、イベント・ライブ会場での情報発信など、さまざまな用途で採用されている。詳細は、サービスのURLを参照されたい。

 

人とモノとのつながりを可視化

 多くのケースでは、集客や関連商品を同時に買っていただく「買い回り」の促進ならびに顧客行動の把握を目的として本サービスを利用する。そのため、本サービスのマーケティング効果を測定するために、訪問件数の推移、コンバージョン率などを可視化できるBIダッシュボードを提供している(図-1を参照)。

図-1 BIダッシュボードで人とモノと情報のつながりを可視化

 

スマートプレートが提供する価値

 これまでに示した通り、スマートプレートは図-2に示す様々な価値を提供している。

図-2 スマートプレートが提供する価値

 

取り扱うデータの概要とその活用法

 本サービスでは、以下の情報を使用する。

  • スマートプレートに埋め込んだモノのID情報
  • アクセスした時刻
  • ブラウザーから取得できる、言語、クッキーID、ロケーション(スタンプラリーなど位置情報が必要な場合)情報など

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 当社は本サービスを、当社プラットフォームにユーザーを囲い込む手段ではなく、広く社会に浸透するインフラにしたいと考えている。そのためには、スマートフォンの機種を選ばずに利用できることが必須であり、日本でのシェアが高いiPhoneのNFCサポートが課題であった。スマートフォンのNFCサポートは、2011年にリリースされたAndroid OS 4.0が最初であるが(対応端末の発売は2012年から)、Apple社はその後も長らくNFCサポートに関して沈黙を守っていた。

 当社はNFCを使った瞬間コミュニケーションの可能性に賭け、この市場でのリーダーとなるべく、Apple社のサポート前に開発をスタートした。Apple社が2017年にiOS 11でNFCをサポートしたことによって市場が一気に拡大した。さらに、端末レベルでのネイティブサポートが行われたiPhone XS/XRの発売によって市場拡大が加速している(図-3を参照)。

図-3 スマートプレート出荷台数の推移

 

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 サービスは全て自社で開発したが、当時はベンチマークが存在しなかった。そのため、当社CEOである萩原智啓自身がヘビーユーザーとなり、顧客の目で機能や使い勝手を検証しながらサービスを作り上げた。最終的にはテストユーザーの評価を参考にして、ブラッシュアップを行っている。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 現在ようやくマーケットの扉が開き、市場が拡大期に入った段階である。現時点では当社は先行者としてのアドバンテージを保持しているが、競合他社が参入してきた際も競争力を保持し続ける必要がある。そのためには、エンドユーザーに支持される必要があり、UX(User Experience)の改善を行い続ける必要がある。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 当社は本サービスを、電気や水道と並ぶ、生活に不可欠なインフラに育てたいと考えている。そのためには、マーケティング面での利用にとどまらず、社会生活に溶け込んだサービスに発展させる必要がある。

 そのため、事例4で示した「災害情報連携」のように、社会インフラとして自治体や行政が使える利用シーンを拡大したい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 NFCの新しい使い方として、タグのコピー防止機能(*3)がある。コピー防止機能付きタグを商品に貼り付けることによって、コピー品でないことの証明が可能となる。今後は、希少価値を訴求するブランドなどとの連携を進めたい。

(*3):NFCタグに書き込まれた情報をスキャンして他のタグにコピーできないように、アクセス毎にセキュアに生成されるIDを付加することによってタグの唯一性を保証する。

 

本記事へのお問い合わせ先

株式会社アクアビットスパイラルズ 担当:渡辺 悠子

e-mail : yuko@spirals.co.jp

URL :  https://spirals.co.jp/ja/