掲載日 2022年04月27日

一般社団法人戸越銀座エリアマネジメント

【提供目的】
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 収集情報を活用した付加顧客サービス提供
  • 新たな顧客層の開拓、マーケティング

【活用対象】

  • 一般顧客
  • その他(商店街というコミュニティー)

IoT導入のきっかけ、背景

 戸越銀座商店街連合会(以下、戸越銀座商店街)は、東急池上線の「戸越銀座駅」に接する全長約1.3kmにわたる関東有数の長さを誇る商店街で、戸越銀座商栄会商店街振興組合、戸越銀座商店街振興組合、戸越銀座銀六商店街振興組合の3つの商店街振興組合によって構成されている。商店街沿いには約400件の店舗が軒を連ね、生鮮三品を扱う店舗も多く残っている最寄品(*1)を中心とした近隣型の商店街である。(写真-1を参照)

 戸越銀座商店街は、下町情緒あふれるたたずまいに加えて、商店街活性化のモデルとなった「とごしぎんざブランド事業」などの推進によって広く注目を集め、地元以外からも多くの方が訪れるようになった。

 商店街が今後も発展してくためには、こうした活性化施策やプロモーションを継続して打ち出していく必要がある。ここで、新たな施策を行う際は、できるだけ多くの店舗に参加していただき、商店街全体としてスケールメリットを出す必要がある。その際に、取り組みをけん引する商店街と、各店舗とのコミュニケーションの効率化が課題であった。従来の紙による回覧を主体とした情報伝達では、商店街からの重要な連絡が確実に伝わっているかの確認が難しかった。

 プロモーションを行った際は、その効果を測定して次の施策に反映する必要がある。その際に来街者数の変化が重要なデータとなる。これまでは、年に数回、外部に委託して通行量調査を行っていたが、継続したデータの収集が困難であった。従来のデータは、長いスパンの来街者数の変化傾向を見るためには有効であるが、個々の施策の効果を評価するためにはより短いスパンのデータが必用である。さらに、新型コロナウイルス感染対策における密の回避という点でも、短い時間単位の来街者数の把握と可視化が重要となった。

 こうした中、商店街が中心となって、上記の課題を解決するための「とごしぎんざ来街者数カウント&シェア」を実現した。

 

写真-1  戸越銀座商店街の風景
(出所:戸越銀座商店街オフィシャルサイトから転載)

(*1): 最寄品(もよりひん):購入頻度が高い日用品で、自宅や職場の最寄りの店舗で購入する商品。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

  • サービス名:とごしぎんざ来街者数カウント&シェア
  • 関連URL:https://togoshiginza.tokyo/?p=595
    (戸越銀座商店街アーカイブ 先進的なIT技術を用いた取り組み)

 本取り組みは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)主催の、モバイルコンピューティングの導入により高度なシステムを構築し、顕著な成果を上げている企業や団体を表彰する「MCPC award 2021」の普及促進委員会特別賞を受賞した。

 

サービスやビジネスモデルの概要

とごしぎんざ来街者数カウント&シェアでは以下のサービスを提供している。(図-1を参照)

  • 商店街から店舗・組合員への連絡事項などを、回覧板アプリを使用して電子的に配布することによって確実な情報伝達を実現。
  • AIを使用した人流モニタリングで収集した来街者数を、回覧板アプリで店舗(組合員)に配信。加えて、来街者への情報発信として、日ごと・時間帯単位の来街者数を「密カレンダー」として電子掲示板に掲載して密を避けた行動を促す。
  • 電子掲示板には、地元少年少女野球チームのニュースなどのローカルな話題も掲載。

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図-1  とごしぎんざ来街者数カウント&シェアの提供サービス
(出所:戸越銀座エリアマネジメント提供資料)

 

内容詳細

(1) 回覧板アプリによる店舗との迅速な意思疎通

 冒頭に示した通り、従来の紙ベースの回覧は、迅速性・確実性の点で課題があった。各店舗の店主・責任者は店頭にいないこともあり、店舗に配布・回覧されたお知らせが埋もれてしまうことがあった。回覧板アプリを導入することによって、スマートフォンに配信されたお知らせをどこにいても読むことができるようになり、情報を確実に伝えられるようになった。
 回覧板アプリはアンケート機能も備えており、アンケート結果を効率的に回収することができる。これによって、新たな施策を打つ際などの意思決定を迅速に行えるようになった。
 

(2) 電子掲示板を使用した来街者への情報発信

 電子掲示板は設置に協力していただける店舗を募り、店舗の軒先に設置している。2022年2月現在、合計6台の電子掲示板を設置している。(写真-2を参照)

写真-2  店舗に設置された電子掲示板
(出所:戸越銀座商店街オフィシャルサイトから転載)

 

 電子掲示板には、商店街沿いに設置したカメラの画像をAIで解析して得られた来街者数を日ごと・時間帯ごとのカレンダー形式で表示している。(写真-3を参照)

 携帯電話ネットワークの位置登録データを活用したモバイル空間統計から混雑度を可視化することも可能であるが、戸越銀座商店街では、目に見える通行人をカメラでカウントする方法を選択した。カメラの設置場所を選ぶことによって、商店街に出ている人数をより実態に近い形で収集できるようになっている。

写真-3  電子掲示板に表示された密カレンダー
(出所:戸越銀座商店街オフィシャルサイトから転載)

 最寄品を扱っている戸越銀座商店街にとって、近隣地区にお住まいの方は重要なお客様である。そのため電子掲示板には、地元少年少女野球チームのニュースなどのローカルな話題も掲載して地域の話題作りに貢献している。(写真-4を参照)

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写真-4  電子掲示板に表示されたローカルな話題
(出所:戸越銀座商店街オフィシャルサイトから転載)

 

商店街の活性化から地域活性化への発展

 戸越銀座商店街は、さまざまな活性化施策を行いながら商店街の魅力を訴求してきた。ここで、商店街は地域社会と共に発展していく必要があるため、最終的には地域の活性化にも寄与していく必要がある。そのため、戸越銀座商店街では、毎年8月の最後の土曜日・日曜日に開催する「とごしぎんざまつり」などのイベント開催によって、地域住民とのコミュニケーションを重視してきた。

 この考え方をさらに進めるために、2019年9月に「一般社団法人戸越銀座エリアマネジメント(TAM)」を設立した。戸越銀座エリアマネジメントでは、戸越銀座商店街および周辺商店街、地域住民や町内会・企業など、戸越銀座を愛する多様な人達の力を借りて、「戸越銀座」というエリア全体の持続的な発展を目指すための取り組みを進めている。(図-2を参照)

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図-2  エリアマネジメントへの発展
(出所:戸越銀座エリアマネジメント提供資料)

 

 

取り扱うデータの概要とその活用法

  •  人流データ(プライバシーに配慮して、画像データはAIによる人流のカウントを行った後で廃棄している)
  • 収集したデータを、アプリを使って商店主、サイネージを使って来街者に提供

 

導入への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 戸越銀座商店街の活性化に従来から協力してきた東京システムハウス株式会社が主催するアイデアソン「IT大喜利」に戸越銀座商店街の理事をお招きし、商店街が抱えていた回覧や合意形成の課題を共有していただいたのがきっかけとなりプロジェクトがスタートした。その後、品川区から、「AI・IoT活用イノベーション創出支援事業」の助成金を得て、掲示板アプリ、AIを活用した来街者数カウントなど複数のサービスを並行して開発した。

 来街者数の表示は、当初グラフを使用して人数の変化を見せるUIを作ったが、写真-3に示したカレンダー形式の方が分かりやすいという商店街からのフィードバックをいただきUIを改良した。商店街を訪れるお客様は、買い物をする曜日や時間帯を意識して行動することが経験から分かっていたのである。このように動くプロダクトを作りそれを見ていただくことによって、商店街側の知恵とのマッチングが生まれて想定外の付加価値に発展させることができた。

 

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 サービスの構築に際しては、課題解決を最優先にして、ローテクでもハイテクでも柔軟に採用した。使用したハードウェアも比較的安価に調達できるものを使用している。人流検知に使用するAIのエンジンに関してもオープンソースで利用できるものを使っている。開発当初はマスクをした人を認識することができなかったが、程なくマスクに対応したAIエンジンを見つけることができた。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 カメラとAIを活用することによって、24時間・365日継続してデータが収集できるようになった。今後はこうしたデータのマーケティングへの活用を進めたい。現在も来街者数は常時見ており、「月曜日の通行量が思いのほか多いのはテレワークの影響ではないか」といった仮説が立てられるようになった。商店会や店主がこうしたデータをさらに読み解いて販促イベントなどのアクションにつなげる必要があるが、その際にデータからアクションの候補を提示する機能など、データ活用のアイデア出しを進めたいと考えている。

 

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 昨今、家電品は大型量販店で購入することが多いが、戸越銀座商店街には小さな家電販売店もあり、高齢者の方が、日々の暮らしに役立つ商品などを購入されているシーンを見ることがある。高齢者にとっては、徒歩で訪れて気軽に欲しい物の相談ができる近隣の商店は重要であり、こうしたところにも商店街の価値がある。

 こうした多様な商店が活力を失わないようにするためには、商店街の努力に加えて、行政や商工会議所などさまざまな機関との連携が重要になる。こうした連携についても考えていきたい。

 

将来的に展開を検討したい分野、業種

 引き続き、データを活用した街techの領域を開拓したい。

 

本記事へのお問い合わせ先

東京システムハウス株式会社 原口一孝

e-mail :  ichiko@tsh-world.co.jp

 

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