掲載日 2021年11月09日

株式会社テクノア

【提供目的】
  • 事業・業務の見える化
  • 事業・業務プロセスの改善

【活用対象】

  • 企業顧客を対象に活用

IoT導入のきっかけ、背景

 当社は、情報技術【IT文明】の進歩を先取りして『人々がより人間らしい、ゆとりと生きがいがある生活』を実現するため、独創的なソフトウェアと付帯サービス【ソフト文化】の開発と提供を通じて社会貢献を目指している。本記事では、当社が開発したAI画像認識を利用した「工場の見える化」を実現するシステム、A-Eyeカメラを導入いただいたお客様の事例を紹介する。

 鋳物部品の機械加工・組立の事業を行っているコクネ製作株式会社様は、鋳物に最新の加工を施してきた中で、取引先の多様なニーズに応えるには、鋳物製品の加工で培った技術・知識の継承に努めつつ、温故知新の精神でものづくりの技術・知識にITを融合させることが必要であると感じていた。

 5年前に導入した生産管理システムにより、事務作業の効率化は進展していた。しかしこのシステム導入の製造現場への効果は限定的であった。管理部門から出される作業指示の中には、設備・機器の空き状況など実際の作業実態に沿わないものもあり、指示通りに作業がはかどらないことがあった。そのため、設備・機器の稼働状況の把握が必要との結論に至り、これらを把握できるサービスを検討された。

 工場には、さまざまなメーカーの機器が混在している。それらの機器を比較的低コストで、手間も少なく一元管理できるシステムを探しておられたところ、A-Eyeカメラを採用されることとなった。
 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

サービス名:A-Eyeカメラ
関連URL:https://www.techs-s.com/product/a-eye-camera

 

サービスやビジネスモデルの概要

サービス内容:
・AI画像認識を利用した「工場の見える化」を実現するシステム

提供形態:ソフトウェア

価格:初期費用75万円+カメラ1台当たり月額2,000円のサブスクリプション

導入状況:導入開始して約2年経過
 

内容詳細

□仕組み

 A-Eyeカメラは、ネットワークカメラで撮影された画像を元にAI(人工知能)が生産設備の稼働状況を判断し、クラウドに情報を蓄積するIoTシステムである。A-Eyeカメラを導入することによって、例えば、生産設備の操作画面や積層信号灯(パトライト)の点灯状態を撮ったカメラ画像から稼働状況をAIで判別することが可能となる。画像による判別のため、初めに学習データを与えることで機械や設備のメーカーや年代に関係なく稼働状況を把握することができる。またカメラ画像の識別対象も柔軟に設定できる。(図-1、図-2を参照)

 コクネ製作様においても、様々なメーカーの機器が工場内に混在する中で、設備の稼働状況の見える化を低コストで実現したいという課題の解決に役立った。

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図-1 操作画面の画像認識による稼働状況の識別

 

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図-2 積層信号灯の画像認識による稼働状況の識別

□提供価値

 蓄積された情報をリアルタイムに集計・分析し、リアルタイム「あんどん」と呼んでいる表示や稼働状況のグラフによって、全社員で稼働状況を共有する。これによって「工場の見える化」を推進し、生産性向上に寄与する。また、これらの情報はクラウド上で管理されているため、どこにいてもパソコン・タブレット・スマートフォンから確認することができる。(図-3、図-4を参照)

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図-3 リアルタイム「あんどん」による製造装置の稼働状況の表示

 

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図-4 機械稼働率のグラフ表示

概要図

 A-Eyeカメラの全体構成と特徴は以下の通りである。(図-5を参照)

  1. AIによる画像認識を使用することによって、機器の新旧・メーカーを問わず対応が可能。

  2. カメラは市販のWebカメラが使用できるため低コストで導入が可能。

  3. センサーによる稼働データの収集では、設置後に環境が変化することによってデータ収集に支障をきたす可能性があるが、A-Eyeカメラは設置後も学習し続けることで環境の変化にも柔軟に対応し、正確なデータを取り続けることが可能。

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図-5 A-Eyeカメラのシステム構成と特徴

 カメラは判別したい対象物から5m以内の範囲で設置できる。コンパクトなネットワークカメラを使用するため、配線しやすい壁や判別したい工作機械の上など設置場所が自由である。(写真-1を参照)

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     写真-1 識別用カメラの設置場所

 

取り扱うデータの概要とその活用法

1.    ネットワークカメラの撮影画像(積層灯、CNCの文字盤、人 等)
データ形式:画像
活用法:画像を基にAIが設備の稼働状況を判別

2.    AIが判別した設備の稼働データ
データ形式:テキストファイル
データ内容:時間、稼働クラス(稼働・停止・エラー等)等
活用法:稼働データがリアルタイムに「あんどん」やグラフに表示される
 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

□苦労した点
導入当初はAI画像認識の精度が低い積層灯があった。
(カメラと積層灯の位置が5m以上離れていて識別が難しいもの、太陽光の写り込みで誤認識が発生するものがあった。)

□解決方法
AIのモデル学習を繰り返し行うことで徐々に精度が向上した。

□導入にかかった期間
カメラの設置:1日
仮稼働開始:1週間
本稼働開始:2ヶ月
※開始時のカメラ台数:7台(2021年8月現在はカメラ台数18台で運用中)
 

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

お客様における購入物
・ネットワークカメラ
・LANケーブル
・専用PC
 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

□導入して分かった気づき

  • 「稼働率の低い時間帯」や「機械が停止している時間帯」の存在などが明らかになり、問題がある工程の抽出やその改善方法について議論できるようになった。(図-6を参照)

  • コクネ製作様では、社員一人一人が製造現場全体の稼働率を意識し、それぞれが目標稼働率を超えるための施策を考えるようになった結果、目標を上回る機械稼働率を実現され、生産性が向上した。

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図-6 機械が停止する時間の偏り・稼働率の変動(グレー部分)
 

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

  • 生産計画と実績、A-Eyeカメラの機械の稼働状況それぞれのデータが連動してリアルタイムに見えるようにしたい。

  • 全機械の稼働状況を取得し、生産性向上の取り組みを拡大したい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

□生産管理とのシナジー

設備の稼働データと生産実績データを組み合わせることで、「稼働率の見える化」だけでなく、「生産効率の見える化」を行い、さらなる生産性向上、品質の安定に繋げたい。

 

 

本記事へのお問い合わせ先

株式会社テクノアAI・IoT事業部 西村 恭範

e-mail : nishimura@technoa.co.jp