掲載日 2018年11月13日
株式会社内田洋行

株式会社内田洋行

【提供目的】
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 収集情報を活用した付加顧客サービス提供
  • 故障や異常の予兆の検知、予防
  • 故障や異常への迅速な措置

【活用対象】

  • 企業顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 当社はオフィス機器・オフィス家具のメーカーとして広く知られているが、現在はICT関連事業の売り上げが全体の70%を占めており、ICTを活用したビジネス革新を成長戦略に掲げている。その一環として、ICTを活用して働く環境の最適制御を行うUCHIDA IoT Modelの企画・開発を2014年から開始し、本記事執筆時点で約80社の導入実績がある。

 UCHIDA IoT Modelの商品企画にあたっては、過去のBEMS(Building Energy Management System)商談において当社のシステムを導入いただけなかった顧客を訪問し、導入いただけなかった理由を探った。その結果、顧客が求めているのはデータ収集やエネルギー消費の見える化だけでなく、データと連動した最適制御であることに気づいた。

 当社はオフィスの照明や換気、ブラインドをタブレットやセンサーと連動して制御するシステムを手掛けており、これらをビルの中央監視システムにつないで一括制御する潜在ニーズに着目した。実現性の調査を行ったところ、既存の中央監視システムにつながっていない、もしくはつなぐことができない設備が多く存在することが分かった。

 そのため、オフィス設備の全てを「つなぐ」ことが顧客課題の解決や価値創造につながると考え、これをUCHIDA IoT Modelのコンセプトとした。全てをつなぐための手段として、海外での採用実績が多いオープンシステム(LONMARKやBACnet、KNX、Modbus、M-bus、EnOcean)を選択した。

 例えば、既存の中央監視が、空調・換気・入退出を管理している場合、照明・ブラインド・空調温度についてはセンサ・コントローラーを後付けして制御できるようにした。即ち、既存の中央監視を生かし、足回りをオープンシステムで付加することによって、一括して監視・制御できる対象の拡大を実現している。

 また、IoTの導入効果として求められる省力化に関しても、大規模工場では設備管理の専門家が照明・空調などの管理を行っているが、一般のオフィスビルや店舗では専任の管理者を置かずに総務部門等の管理者が遠隔地から集中監視を行い、トラブル発生時には集中監視先から各拠点に指示を行うケースが多いことに着目した。そのため、専門家でなくとも扱える分かりやすいユーザインタフェース(UI)を備えたタブレット端末から操作ができるようにしている。また、複数拠点にまたがる監視が行えるよう、セキュリティが万全のクラウドベースのシステムとして提供している。

 このように、UCHIDAだからできることを実践し、既存IT/OTベンダーとの差別化を図っている。

 

IoT事例の概要

サービス名、関連URL

UCHIDA IoT Model
 

サービスやビジネスモデルの概要

 UCHIDA IoT Modelは、センサーネットワークからさまざまな環境情報を取得し、これをビル統合管理システムと連携させ、最適な環境を作るための制御を行う仕組みである。この実現のため、従来の中央監視システムをさらに拡張したLOYTEC社のビル統合管理システムや各種センサーを商品としてラインナップすると共に、顧客が求めているオフィス環境を一括制御で実現するためのシステムインテグレーションとカスタマイズに注力している。例えば、騒音レベルの高い工場現場で地震の緊急速報を従業員にいち早く伝えたいとの要望に対しては、音声による放送ではなく、地震速報鳴動装置と連動した天井灯の点滅で実現するなどの対応を行っている。

 センサーの接続には設置の簡便性(導入コストの安さ)を重視して無線を使用している。オフィスや工場などの設置環境に応じて、電波の到達距離や電波干渉などを考慮し最適な無線システムを選定している。

 本システムは、新築ビルだけでなく、既存ビルへの後付け導入も可能である。またオフィスだけでなく、工場や研究開発部門、物流センター等にも適用可能である。

内容詳細

センサーを入り口、制御を出口として作りこむ

センサーをビル統合管理システムにつなぐことが入り口(データ収集の領域)である。さらに、集めたデータを活用してオフィスの快適性を高める最適制御を出口(設備の統合監視・最適制御の領域)として作りこんでいる。

 例えば、快適なオフィス環境を実現するため、オフィス内の複数個所で温度・CO2をモニターし、温度ムラを検出した際には送風機を個別に動作させることによって温度ムラの解消を行うなどの制御を行っている。

 機器の制御は、海外で広く使われている制御プロトコルをIPに載せることで実現している。例えば、BACnet(*)のコマンドをコントローラ経由で空調機に送ることによって設定温度変更などの制御を実現している。

(*) BACnet:Building Automation and Control Networking protocol。インテリジェントビル用ネットワークのための通信プロトコルとして、ISOで標準化されている。多くの空調機器はBACnet対応のインタフェースを有する。

概要図

 UCHIDA IoT Model では、センサーネットワークとビル統合管理システムが連携。センサーが環境の情報を取得。様々な角度から分析を重ね、最適な環境をつくるための制御までを行う。後付け可能なためゾーンやフロア単位から実装し、全体に拡張が可能。

UCHIDA IoT Model全体イメージ
日本全国にあるオフィスビル、工場や物流拠点などを、インターネット経由で統合して統合遠隔管理可能。

 

取り扱うデータの概要とその活用法

案件によって扱うデータが異なるが、一般的に以下のデータを収集している。

  • 温湿度、気圧、CO2濃度、ほこり(PM2.5)、照度、人感センサー(人数カウント)、水位、振動、音、ドア開閉等

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 当社が従来扱っていたオフィスビルの施工後に導入する情報装備ではなく、ビルの設計や施工段階に組み込まれている監視制御系の構築は、初めて取り組むチャレンジ領域であった。ビルの施工に関わる領域なので、建設業界やビルの施主との関係構築が必要であった。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

  • UIに関して、専任管理者が使用する系統図画面だけではなく、一般従業員が簡便かつミスなく使用できるよう、タブレット端末を使用し直観的なUIをデザインした。従来の管理画面はCAD図面を基に生成することが多かったが、店舗の写真に操作対象をアイコンとして配置することなどの工夫を行った。
  • 音声コマンドによる操作にも対応しUIの簡便化を行っている。例えば、多くの会議システムの操作はリモコンで行う必要があるが、日常的に使用している家電と異なり、会議室で不慣れな操作に立ち往生する場合が多い。このようなケースでは音声での操作が有効である。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

  • 収集した情報を顧客が利用するためのサービス化。
  • AIを用いた環境データと快適度等のより高度な相関分析(基本的な分析は既に行っている)。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

  • ビル管理会社の業務効率向上に寄与する設備故障の予兆分析

将来的に展開を検討したい分野、業種

  • ネットワークやセキュリティの設計に関わるIT業界とのさらなる連携。

 

本記事へのお問い合わせ先

株式会社内田洋行

URL :   https://office.uchida.co.jp/solution/iot/