掲載日 2022年10月27日

株式会社コア

【提供分野】

  • 位置情報を使用する業界(製造(機械)、建設・設備、運輸・交通、公共など)

【提供目的】

  • 事業・業務プロセスの改善
  • 位置情報の特定

【活用対象】

  • 企業顧客
  • 社会全般

IoT導入のきっかけ、背景

 株式会社コア(以下、当社)は、「ソリューションメーカとして社会課題を解決し続けます」という取り組み方針のもと、ソリューションビジネス、SIビジネスを展開している。ソリューションビジネスにおいては、次の7つのカテゴリでビジネスを展開している。(図1参照)

 ・メディア:テロップシステム
 ・公共:情報統制システム
 ・医療:電子カルテシステム、高齢者薬剤管理システム
 ・GNSS注1:高精度測位ソリューション
 ・IoT(AI):点呼支援、スマート遠隔保全・環境監視
 ・エネルギー:情報伝達、設備監視、セキュリティ
 ・DXインサイト:画像認識AIソリューション、RPA適合性診断サービス

注1:GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)は、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileo等の衛星測位システムの総称である。

 創業以来の事業である組込みソフトウェア開発で培った技術とノウハウが当社の競争力の源泉となっているが、高精度測位の分野においても「手軽に持ち運んで利用したい」「雨や埃を気にせず屋外で利用したい」「ネットワーク環境がない場所でもセンチメータ精度の測位を行いたい」など、利用者のさまざまな要望に対応する測位用の受信機を提供している。特に、準天頂衛星「みちびき」に対応する受信機とそのソリューション開発には力を入れており、センチメータ精度で測位が可能な高精度測位ソリューションをベースにさまざまなサービスを展開している。自動運転をはじめ建設工事や農作業の自動化、ドローンの自動運行など、高精度な位置情報を必要とするサービスが今後増えることが予想されており、高精度測位ソリューションの市場が広がることを期待している。

図1:コアのソリューション(出所:コア 提供資料)

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

・サービス名:位置情報を活用した高精度測位ソリューション「Cohac∞(コハクインフィニティ)」

・関連URL:https://www.gnss.jp

・導入先:位置情報を使用する業界(製造(機械)、建設・設備、運輸・交通、公共など)

サービスやビジネスモデルの概要

「みちびき」は日本の真上を8の字を描くように飛んでいるため衛星を見ることのできる仰角が高く、建物などの遮蔽物の影響を受けづらい測位サービスを提供することできる。また、センチメータ級測位補強サービス注2を受信・利用することで、センチメータ精度で測位することが可能である。

  当社はこの「みちびき」を利用し、高精度測位ソリューション「Cohac∞(コハクインフィニティ)」と関連するサービスを提供している。なお、「Cohac∞」は、"CORE High ACcuracy positioning solution"の頭文字とみちびきが8の字で軌道していることを合わせて名付けたものである。

注2:高精度な衛星測位を行うため、国土交通省国土地理院が全国に整備している電子基準点での観測データを利用して補正情報を計算し、現在位置をより正確に求めるための補強情報(センチメータ級測位補強情報)をみちびきから送信している。

 

内容詳細

  高精度測位ソリューション「Cohac∞」に関連して提供しているサービスの概要は次の通りである。高精度測位の実現方法には複数の選択肢があり、利用する環境によって最適な方式や受信機が異なるので、コンサルティングやさまざまな支援サービスを提供している。

・ドローンサービス

  ドローンと「みちびき」、人工知能(AI)を組み合せ、作業現場の負荷が少ないドローン測量や膨大な撮影データ解析の自動化・効率化を実現している。このソリューションでは、農地や森林などインターネットが不安定、あるいは接続できない環境であっても、正確な位置情報の取得とドローンの精密な飛行が可能である。このため、通常のドローン測量では不可欠な、手間を要する標定点の設置や標定点座標の測量が不要となる。結果として、現場での作業時間を飛躍的に短縮することが可能となる。

  このソリューションの展開のため、「導入支援サービス」「ドローン業務代行サービス」「BIM/CIM注3連携サービス」を提供している。

注3:BIMはBuilding Information Modeling Buildingの略語、CIMはConstruction Information Modelingの略語。建設・土木業界では、構造物等の形状や構造を3次元で立体的に表現した3次元モデルを構築し、計画から設計、施工、維持管理の事業プロセスにおいて、関係者間でこの3次元モデルを共有・利活用し業務の効率化・高度化を図る取り組みが進展している。

・位置管理サービス

  測位用の受信機の選定・設置に加え、ネットワークやサーバーの構築、位置情報アプリケーション開発など、顧客が持っている受信機のIoT化・システム化を実現している。

・GNSS評価分析サービス

  顧客が安心して高精度測位に使う受信機を導入できるよう、受信機を導入する環境の調査や期待している精度を得られることを確認するなど、導入サポートを実施している。また、受信機を導入した環境での精度評価、現在使っている受信機との精度比較、受信機導入の結果が思わしくない場合の問題点調査なども実施している。さらには、得られたデータの解析や報告書作成なども支援している。

  具体例としては、森林内の測量において既存のコンパス測量の代替として、「みちびき」対応受信機を使った場合の測量結果をコンパス測量の結果と比較し、十分利用可能な測量制度を得られること、測量にかかる作業工数削減が可能なことなどを実証している。

 

 

取り扱うデータの概要とその活用法

   GNSS受信機から出力するNMEAフォーマットやRTCMフォーマットなどの情報。いずれも一般的なGPSのデータフォーマット。

  ・位置情報、時刻情報
  ・センチメータ級測位補強情報
  ・タイミング情報1pps(1秒間に1回出力するパルス)、10MHz

ドローンから出力するデータフォーマット。いずでも一般的な画像データフォーマット。

   ・JPEGファイル。exif情報もしくは別ファイルに正確な位置情報を含む。
   ・TIFFファイル。画像ファイルから作成したオルソ画像データ。
   ・LAS、TEXT等。画像ファイルから作成した三次元点群データ。

 

DX実現への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 「みちびき」を利用した高精度測位を提供できる環境が整うまでの研究期間が長く、実際に送信される信号を受信し、位置情報の精度を上げることに苦労した。また、小型化、低価格化を実現するにはある程度の市場規模が必要であるが、欧州版の測位衛星であるガリレオ衛星対応の受信機を開発していた海外メーカと共同開発する形で実現した。図2は当該モジュールを利用して実現したセンチメータ級測位補強サービス対応受信機である。

図2:センチメータ級測位補強サービス対応モジュール搭載の測位用受信機
(出所:コア 提供資料)

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 当社で、みちびき対応の高精度測位対応受信機をはじめ各種の測位用の受信機を開発・提供している。センチメータ(cm)精度の測位を実現する受信機を利用することで、これまで難しかったドローン測量の効率化などさまざまな分野での課題解決が可能となっている。

 

 

DXの今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 みちびき対応の受信機の価格は安くなってきたが、まだ既存の測位用受信機に比べると高いのが現状である。ユーザからはさらに安くならないと使えないという声もある。低価格、小型化、軽量化をいかに実現していくかが今後の課題である。

 また、我々だけではなく、内閣府、関連するメーカ共通の課題であるが、みちびきを活用するアプリケーションがようやく出てきた段階であり、独自の技術を組み込みながら従来のGPSでは実現できない機能拡張したアプリケーションを考えていくことが今後必要である。

 なお、みちびきに関しては今後、認証機能の搭載が予定されている。偽のGPS信号を送信するGPSスプーフィングにより位置を狂わせることができてしまうので、それに対する対策を今後さらに強化することが必要となっている。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 アプリケーションの開発を推進するうえで、今後、ユーザとの連携を強化すべきと考えている。

新しい測位サービスの開発に向けた研究開発

 当社は、測位衛星からの情報が利用できない場所でも位置を測ることができるように、単眼カメラを用いた距離測定技術の開発に力を入れている。この技術は、被写体までの距離と撮影画像の画素位置で収差に特徴があることを利用し、ディープラーニングの手法を用い距離を割り出すものである。

 本技術は、総務省が公募した研究開発課題「周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発」でも活用予定である。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)を代表とするコンソーシアムで採択されている。

 本プロジェクトの目的は、電波の有効利用を図りつつ位置の特定精度の向上を図るために、さまざまな民生機器に小型の原子時計を搭載し、それらの間で時刻情報を高精度に同期させることである。コアでは、準天頂衛星みちびきの測位補強サービスを活用して高精度時刻を取得するGNSSアンカーを開発し、ネットワークまたはGNSSを利用して同期した高精度時刻を使って対象物の位置を正確に把握する多点測位システムを構築する(図3参照)。

 この実現に向けて多点測位システムの研究開発に力を注ぎ、位置情報を把握するソリューションの拡大を図っていきたい。

図3:コアが開発する多点測位システムの概要(出所:コア提供資料)​​​​

 

 

本記事へのお問い合わせ先

GNSSソリューションビジネスセンター 山本 享弘

e-mail : gc-sales@core.co.jp

TEL :  044-989-5115

URL:https://www.core.co.jp/