IoT事例の概要
サービスやビジネスモデルの概要
プレス加工・組立・金型製作・部品加工
内容詳細
新潟県小千谷市にある山口製作所(YSS)は、1968年に創業。金型の製造から金属プレス加工までを一貫して手がけている。新技術やITへの投資にも積極的で、高精度な製品を短時間で納入できる体制を整備している。そのコンセプトは「1つのデータを1回手入力で済ませる」。そしてこれを実現するために、生産管理システムを独自開発している。
そんなYSS様が、さらなる生産性向上のために選んだのが、当社(株式会社KMC)のIoTソリューションである。年間1000種類程度製作する金型は、設計段階から使用後の摩耗までの全プロセスをデータベースで一元管理している。さらに当社の「Σ軍師i」を活用し8台のプレス機から詳細なデータを取得し、生産データの蓄積には当社の「電子カルテ」を活用している。
データ分析によって不良品が出る前に予防措置を実施する体制を構築することで、現在年間500万円ほどかかっている不具合対応費用や年間50時間ほど発生しているプレス機停止時間の削減を狙っている。KMCのIoTソリューション導入により、生産性向上に加え、取引先からの信頼度向上による競争力強化を狙っているのである。将来的にはさらに自動化・効率化を進め、熟練の職人でなくとも活躍できる工場を目指している。
(参考)
Σ軍師i:生産ロギングデータや振動、温度、過負荷などの後付けセンサーデータを収集する機器。古い機械も含め、複数メーカーの多彩な生産機に対応。パトライト付FAコンピュータを採用し、設備や条件の不良を即座にキャッチし、現場で警告を出す機能を有している。
電子カルテ:電子カルテシリーズは、金型工場・生産工場、保全エリアの現場用の日本版IoTシステム。金型や生産機械、作業者などをQRコードで管理。不具合事象を声・画像・動画でリアルタイムに把握することにより、生産現場のトレーサビリティ確保を可能にする。また、生産機械の設定情報や収集したセンサー情報と連携させることにより、製造に関わる情報を一元管理可能。
取り扱うデータの概要とその活用法
ショット数(金型で製品を成形する回数のこと)、プレス荷重変動データ、設備稼働状況(稼働率)
事業化への道のり
苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間
YSS様が使っておられる古いプレス機や周辺装置からのデータ収集に苦労した。特に古いプレス機はメーカ側にも資料が乏しく、IoT対応になっていない。今回のIoTソリューション導入の主な目的は、2枚抜き注1、カス上がり注2の不具合検知であったが、これを検知するセンサーの選定、取得データの整理、データを活用するアルゴリズム開発に多くの時間を費やした。また、収集するデータについても議論を重ねた。例えば、フリッカー信号、電圧信号、接点信号などの活用である。最終的には、プレス成形機で成形する際の荷重変動データを活用することとしたが、荷重変動に対する閾値設定にあたってはベテランの判断を取り入れた。構築期間は3から4か月。
注1:「2枚抜き」は材料をプレス加工する際に、一つの材料からサイズダウンした2つの材料を抜いて作ることを言う。
注2:「カス上がり」は材料をプレス加工する際に、本来は材料にくっついてはいけない打ち抜いたカスが材料の下に入り込むことを言う。
技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの
荷重センサーをプレス成形機に取り付けて、「カス上がり」発生に伴う荷重変動の傾向を捉えるためのソフトウェアを開発。荷重変動データを「∑軍師i」で収集し、生産状況の「電子カルテ」との連携によりリアルタイムモニタリングを可能とする仕組みを開発・構築した。開発にあたっては、YSS様が既に構築されていた管理システムとの連携、融合が課題であった
今後の展開
現在抱えている課題
予知予防の精度を高めるため、金型内の各部位の荷重変動をより緻密に計測できるようににすること。
将来的に想定する課題、強化していきたいポイント
工場内にある全てのプレス成形機にIoTソリューションを導入し、カス上がりによる不良の予知予防を本格化する。また、これによって、大幅なロスコストの削減を図りたい。
連携を含めた強化分野
- 収集情報を活用した付加顧客サービス提供