掲載日 2023年04月19日

 

日本ソフト開発株式会社

【事例区分】
  • IoT等を活用した企業・自治体等向け製品・サービス等の提供
  • IoT等を活用した社会課題解決の取り組み
  • IoT等を活用した実証実験等の取り組み

【関連する技術、仕組み、概念】

  • IoT
  • DX
  • LPWA
  • 4G

【IoT等の利活用分野】

  • 公共
  • その他(民間排水、建設現場など)

【IoT等の利活用の主な目的・効果】

  • 生産性向上、業務改善
  • サービス・業務等の品質向上・高付加価値化、顧客サービス向上
  • 事業継続性向上
  • 事業の全体最適化

課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)

 日本ソフト開発株式会社(以下、当社)は、滋賀県 米原市に本社を構え、創立50 年の歴史を重ねるICT ベンダーである。Society5.0 社会を創造すべく価値の進化に挑戦しており、全国の官民向けにクラウド型遠隔監視制御サービス「 SOFINET CLOUD 」を提供するなど、社会ニーズに対応した各種ICTサービスを事業展開している。(図1参照)

図1:事業分野(出所:日本ソフト開発提供資料)

 1977年に琵琶湖で赤潮が異常発生したが、地方自治体から提案要請を受け、下水道の水質やプラントの稼働状態の監視をオンプレミス型の水環境監視システムとして立ち上げた。このシステムをベースに水環境監視システムを発展させ、さらに2012年にクラウド化を行いクラウド型遠隔監視制御サービスとして提供しているのが「 SOFINET CLOUD 」である。現在では、312事業体の6,500以上の施設で稼働している。(図2参照)
 なお、本サービスは、「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2022」の総務大臣賞を受賞している。

  参照先:https://www.aspicjapan.org/event/award/16/index.html

図2:稼働実績(出所:日本ソフト開発提供資料)

事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

・サービス名:クラウド型遠隔監視制御サービス「 SOFINET CLOUD 」

・関連URL:https://www.nihonsoft.co.jp/sofinetcloud/index.html

・導入先:上下水道、農業用水、雨水排水、アンダーパスなど水インフラを持つ自治体、民間企業

サービスやビジネスモデルの概要

 クラウド型遠隔監視制御サービス「 SOFINET CLOUD 」では、LTE*1/LPWA*2/光回線を使用して各施設からの水に関するデータ(水位、流量、水質など)を収集、蓄積し、異常発生時には即時にメールや音声で通報し、現場の状態監視や各施設への遠隔制御が可能なサービスとなっている。(図3) 
 クラウド型のサービスプランとしては、使うことが可能な機能をベースにライトプラン、スタンダードプラン、プレミアムプランを用意しており、お客様の規模、運用、コストに応じた柔軟な構築を可能としている。

*1:LTEとは無線を利用したスマートフォンや携帯電話用の通信規格のひとつであり、携帯電話のデータ通信の快適な利用を目指し、高速化と低遅延、多接続の3点に重きを置いて生まれた通信規格。Long Term Evolution(ロングタームエボリューション)の略称

 *2:LPWA(Low Power Wide Area-network、LPWANとも称される)は、その名のとおり「省電力かつ長距離での無線通信が可能」という特長をもった通信技術の総称

ビジネスやサービスの内容詳細

「 SOFINET CLOUD 」の主な機能については次のようになっている。

① 地図表示
  警報発生時は地図上に当該施設を点滅表示し、パソコンからチャイム音にて分かり易く通知。雨雲レーダー表  
  示により濁度や不明水、氾濫等の把握が可能。

② 現在警報・警報履歴
  発生件数など現在発生中の警報のみを分かり易く表示。警報ガイダンス表示による異常時の早期対応支援を目
  的とした機能を搭載。

③ 運転履歴
  機器の運転履歴と計測値の変化、それに加え異常発生を同一画面に相関表示。

④ 設備台帳・保全台帳
  拡張性の高い設備台帳や要望に応じた保全台帳を登載し、そこに各種関連ファイルや写真、動画などのファイ
  ルを登録可能。

⑤ 管理帳票・グラフ表示
  IoT端末に格納された計測値や機器の稼働データを1時間毎に自動収集。比較グラフ、統計グラフなどデータを
  分かり易く表示する機能も搭載。

⑥ 遠隔操作・操作履歴
  ワンタイムパスワードと二段階認証によるセキュアな運用を実現。機器の運転操作のほか、設定値の変更など
  の操作履歴を記録可能。

⑦ メール通報・音声通報
  最新メールを開封することにより、全施設の警報発生状況を確認することが可能。曜日祝祭日、時間帯設定な
  どきめ細かな通報設定が可能。

図3:「SOFINET CLOUD」の概要(出所:日本ソフト開発提供資料)

 

取り扱うデータの概要とその活用法

・施設の位置情報、機器の運転情報
・各施設に設置されている計測器、センサからの水質、流量、電力などの情報、及びカメラ画像

 

事例の特徴・工夫点

IoT等による価値創造

 クラウド対応により、お客様の初期費用を抑制することが可能になった。また、お客様がどこにいても監視・制御・通報が可能になるなど、お客様の維持管理業務の改善に大きく寄与している。社内的には、オンプレミス型でサービスを提供していた頃よりも生産性が向上すると同時に、開発リソースを集中したことで、技術の平準化、底上げができた。さらに、副次的な効果も生まれている。例えば、建設現場でのIoTシステムとしての利用は、水処理から派生した応用展開である。また、農業IoTの取り組みにより得られた知見、ノウハウを真空下水道の設備監視へ事業展開できた。

IoT導入や事業化時に苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 当初、クラウド利用に関する知識が十分ではなく、開発に時間を要した。まずLinuxベースでオンプレミス型のウェブ監視システムを構築し、このシステムをクラウド化した。オンプレミス運用とクラウド運用の両方に対応可能なNECプラットフォームズ社の「コルソスシリーズ」との出会いで、更に進化を遂げた。ことができた。
 クラウドシステムの運用開始後も、毎年、70~80項目程度お客様から機能追加の要望がでている。この中から要望が多い20~30項目を選択し、優先して対応している。一例としては、水道監視向けの機能であるリアルタイムトレンドグラフの表示機能がある。主な改善点は次の通りである。

・最大10日分の表示を最大1年分グラフ表示が可能になるように変更。
・単一施設に属する項目の表示しかできなかったものを、複数施設から任意に選択したものを表示できる
ように変更。

重要成功要因

 一番の成功要因は、現在、パートナーとなっている水処理施設の建設・保守を行っている総合エンジニアリング企業などとの出会いである。以前は、競合していたこれらの企業と戦略的ビジネスパートナーになることができたことで、お互いの強みを活かし提案の深みと幅が強化された。また、既設設備の情報開示などにより既存設備の入れ替えをすることなく、当社IoTサービスを導入することが可能になった。顧客は既存設備を資産活用することで、構築費の抑制とともに、IoT構築のスピードが加速した。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 WebサーバーのOSをLinuxにして、オープンソースソフトウェアの利用を開始している。これにより世の中の事例を参考に開発することが可能になり、効率よく開発を進めることが可能になっている。

 

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題、挑戦

 生産性向上を目的とした仕組み改革を進め、人材育成の時間を確保しリソース不足、人材不足を図っていきたい。また、予兆診断の実現や分析診断の向上など、API連携を進めていきたいと考えている。

技術革新や環境整備への期待

 ①当社の主要な顧客である地方自治体では、停電時であっても通報機能が要求されるので長時間バッテリー等の蓄電技術の発展に期待をしている。

 ②マンホールポンプなど小規模の施設数が掌握できていないケースがある。これらがデータベース化されると業務効率が上がると考えている。

 ③管理帳票の独自フォーマットにこだわりを持たれているケースが散見される。これによる労力はコストアップにつながってしまうため、予測分析技術の発展とともに旧態依然とした管理の脱却を期待している。

 ④クラウド利用料の請求業務も6,000を超える施設への対応が必要となるので、請求書の電子化が進んでいくことを期待している。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 API連携を強化していきたい。さまざまなデータを収集している他のシステムと連携することにより、水処理分野のデジタル・トランスフォーメーションを推進していきたい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 設備の故障予知、需要予測、水位、雨量などを利用した河川の氾濫予測などのAI技術を持っている企業との連携を強化していきたい。また、ドローンで取得した映像を当社のIoTシステムの中に組み入れて、新しい価値創出に挑戦すべく検討を進めている。

 

本記事へのお問い合わせ先

担当:環境IoTプロジェクト本部 野原 徹

e-mail : noharat@nihonsoft.co.jp

TEL:0749-52-3811

URL : https://www.nihonsoft.co.jp/  

 

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