掲載日 2023年02月07日

株式会社プラグ

【事例区分】

  • IoT等を活用した企業・自治体等向け製品・サービス等の提供

【関連する技術、仕組み、概念】

  • AI、DX

【IoT等の利活用分野】

  • 製造(食品)
    製造(化学)
    流通・小売
  • その他(飲料、食品、化粧品・ヘアケア、医薬品、衛生用品、ペット用品などのパッケージデザイン、文具やビジネス書の表紙のデザイン)

【IoT等の利活用の主な目的・効果】

  • 生産性向上、業務改善
  • サービス・業務等の品質向上・高付加価値化、顧客サービス向上

課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)

 プラグは、2014年にマーケット調査などのリサーチ会社とデザイン会社が合併して生まれた。社名の「プラグ」は、電源のプラグに由来している。プラグには穴が二つあって、強力なエネルギーを供給してくれる。リサーチとデザインという二つのサービスを組み合わせ、お客様の商品やブランド、会社を強力に輝かせる力になりたいという思いを社名に込めている。

 デザインを評価・生成する「パッケージデザインAI」は、まさに二つのサービスを組み合わせている。当社は、2015年から独自に消費者のパッケージデザインへの好意度調査を実施しており、デザイン評価に関する大量のデータが蓄積されている。このデータを活用し、デザイン開発の効率化・高度化に貢献したいと考えた。AIを活用することで、商品デザイン開発の時間やコストを大幅に削減できるサービスを開発した。パッケージデザインAIを活用いただいた商品の売上が大きく伸びたという事例も多数でてきている。各種賞の受賞や、企業の「マーケティングDXを推進するサービス」と紹介されるなど、光栄な評価をいただいている。デザイン開発の質をあげる新しい手段として、今後もさらにサービスを向上させていきたい。

 

IoT等利活用の経緯
(課題解決の鍵となる技術・アイディアの発想やビジネスパートナーとの出会い等活用に至った経緯)

 パッケージデザインを評価するAIは、東京大学の山崎 俊彦 教授との共同研究成果がベースとなっている。パッケージデザインAIは消費者調査のデータを基に、AIが消費者の評価を予測するが、この予測の精度をあげることに非常に時間を費やした。指導していただける先生を探していたときに、運よく山崎先生から指導を受けることができた。月に一回くらいのペースで指導を受け、その回答を持っていき次の指導を受けるという形で、AIに対する知見を得ることができた。また、社としてAIに対する理解も深まった。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

パッケージデザインAI
https://hp.package-ai.jp/

 サービス提供を開始してから3年間で、約860社(2022年12月現在)の企業様がこのサービスを活用されている。代表的な活用事例としては、次のようなものがある(敬称略)。

・  味の素株式会社「マッケンチーズ」
・  カルビー株式会社「クランチポテト」
・  オタフクソース株式会社「お好みソース 大人の辛口」

サービスやビジネスモデルの概要

 「パッケージデザインAI」は、1020万人の消費者調査の結果を学習データに使い、東京大学と共同研究したAIシステムで、従来のデザイン開発の時間とコストを大幅に短縮するサービス。「評価AI」と「生成AI」で構成されている。「評価AI」は開発中のデザイン案をウェブにアップロードするだけで、消費者がデザインをどのように評価するかをAIが予測する。「生成AI」は元のデザイン案のパーツを組み替え、新たなデザイン案を作成し、そのデザイン案を再度、評価する。この生成と評価をAIが何度も繰り返し、1時間で最大1000案のデザインを作成する。作り出した1000案を消費者の好意度が高いものや、「おいしそう」「高級感がある」などのイメージワードのスコアが高いデザイン案を選択することができる。新商品、リニューアル商品の売上アップや、商品開発に携わる商品開発担当者やブランドマネジャー、デザイナーの業務効率化といったメリットを創出する。
 本サービスは、クラウドを利用して提供している。利用に当たっては会員登録するだけでサービスを使えるようになる。

 料金プランの概要は次のとおりである。詳細な料金プランはhttps://hp.package-ai.jp/price/を参照されたい。また、無料のお試しプランも用意している。

・  評価AI:1画像当たり15,000円で評価(アドホックプラン)
       1か月使い放題で50~70万円(使い放題プラン、料金は契約月数で変動)
・  生成AI:1プロジェクト当たり30万円

 

ビジネスやサービスの内容詳細

 パッケージデザインの評価AIのベースとなっているのは、プラグ社が蓄積している消費者を対象としたパッケージデザインに関するウェブ調査のデータである。当社は一商品あたり1000名、今までに1万以上の商品画像を対象にデザイン調査を行っており、累計で1,000万人分を超える消費者データを蓄積している。データの内容は、パッケージデザインが「好き」か「好きではない」かを5段階評価した結果などである。この蓄積データを利用し、次のような評価を行っている。

 ①    パッケージデザインの好意度スコア
 ②    パッケージデザインのどの部分に注目するかを可視化するヒートマップ
 ③    「シンプル」「なつかしい」「安心感・信頼感がある」など食品系では19種類、非食品系では18種類のイ
   メージワードで予測するイメージ予測
 ④    好意度のバラツキ予測

 これらの評価結果については、画像別に1枚に整理した一括レポートという形でも利用者に提供している(図参照)。

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図1 一括レポートの例(出所:プラグ提供資料)

 

取り扱うデータの概要とその活用法

【パッケージデザインAI評価用のデータ】
 消費者を対象としたパッケージデザインに関するウェブ調査のデータ(今までにデザイン調査を行った1万以上 
 の商品画像を対象とした、累計で1,000万人分を超える消費者データ。調査は年2回継続して実施しており、デー
 タ数は今後も増える予定)

【パッケージデザインAIへのインプットデータ】
 評価AI:デザイン画像(1回につき最大10枚)
 生成AI:デザイン画像(最大5枚、各画像25MBまで)

【パッケージデザインAIのアウトプットデータ】
 評価AI:評価結果(好意度スコア、ヒートマップ、イメージワード予測、好意度のバラツキ予測、一括レポー
 ト)
 生成AI:デザイン案(画像データ)

 

事例の特徴・工夫点

IoT等による価値創造

 本サービスの利用者であるお客様は、従来パッケージデザインの開発に平均6か月の期間を要していた。最初の3か月間は幅広いデザインを制作する創造の期間、後半の3か月間はデザインの消費者調査を実施し、デザインの改良を繰り返す調整の期間である。「パッケージデザインAI」を利用すると、この3か月かかっていた後半の期間を1時間に短縮することができる。また、一商品当たり数十万円から数百万円かかっていた消費者調査をスキップすることも可能である。商品開発期間の短縮が可能になるだけでなく、開発コストをかけられないような商品であってもより優れたデザインに改良することができる。また、従来のデザイン調査では、消費者にデザインを見せるため、デザインが漏えいするリスクがあった。「パッケージデザインAI」では、AIが評価するのでそのリスクが低下する。お客様からは「デザインを数値化でき、客観的に評価してくれる点がよい」という声をいただいている。

 

IoT導入や事業化時に苦労した点、解決したハードル、解決に要した期間

  AIの精度を高めることに苦労した。半年くらい試行錯誤して、事業化に必要と考えていた評価基準をクリアすることができた。評価基準は、消費者評価の実測値とAI評価の予測値の相関係数、それから実測値と予測値の絶対誤差の平均値である平均絶対誤差である。相関係数は1に近いほど精度が高いが、0.748と高い値を実現している。一方、平均絶対誤差は小さいほど誤差が少ないが、0.133を実現した。(2022年12月時点)どちらも事業化には問題ない値であった。

重要成功要因

 デザインにAIが活用できるのではないかと考えたこと。AIに距離がある業界にこそチャンスがあると考え、チャレンジした。システムに関しては、完全に自社開発で、当社の副社長が作り上げた。自社開発したことで、AIのノウハウが自社に蓄積され、迅速に新しい機能を追加できたり、AIを活用した新サービスの開発ができている。AIについて素人だった社長や営業のメンバーも、G検定に挑戦し合格し、知識を身につけたことで、お客様への信頼形成につながっている。

 サービス改善に当たっては、お客様からいただいたコメント、例えば「男女別、年代別に結果をみたい」「評価の結果を一枚のレポートにしてほしい」などの声が参考になった。お客様の使い方を見ていると、消費者調査の代替として使用するだけでなく、消費者調査にかけるデザイン案を決めるのに使ったり、AI評価と消費者調査の結果を組み合わせて最終デザインを決定するなど、商品開発の新しい方法として活用されている。お客様から貴重な知見を提供いただいている。

注:一般社団法人 日本ディープラーニング協会が実施している検定試験。ディープラーニングの基礎知識を有しているか、適切な活用方針を決定して事業活用する能力や知識を有しているかどうかを検定している。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 AIアルゴリズムの開発。デザインをどう評価するかについては、いろいろな知見をAIアルゴリズムに盛り込んでいる。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来に想定する課題、挑戦

現時点では、次の3つが新たに挑戦したいことである。

・  中小企業の方々へのパッケージデザインAIの浸透(デザインにお金をかけることができなかった中小企業の
   方々に、質の高いデザインを提供できるようにしたい)
・  ウェブデザインの評価など異なるデザイン分野への展開
・  海外へのサービス展開

 デザインという領域に道具としてのAIが活用される一方で、AIを使うことによって新たな創造性が啓発されるといった双方向の現象が生じ、デザインの世界が活性化されることを期待したい。

技術革新や環境整備への期待

 AIで生成する過程や、生成した制作物に対しての著作権の考え方やルール、法整備が必要だと考える。これによって、安心して多くの人がAIによる創造活動を利用することができるようになる。日本の法制度は、諸外国に比べ新しい技術への対応スピードが遅いように思う。このスピードアップも期待したい。

 

 

本記事へのお問い合わせ先

株式会社プラグ 経営企画室 広報

e-mail : info@plug-inc.jp

TEL :  03-5577-7850(代表)